映画『マリッジ・ストーリー』【ネタバレ感想】対岸の火事とは思えないリアリティ溢れるドロ沼離婚劇!
映画『マリッジ・ストーリー』を観てきました!(2020年2月17日鑑賞)
なかなかヘビーな離婚のお話でしてね。
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの演技も素晴らしく、リアリティに溢れた面白い作品に仕上がってましたよ。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2019年11月29日
監督:ノア・バームバック
脚本:ノア・バームバック
音楽:ランディ・ニューマン
制作国:アメリカ
上映時間:136分
配給:Netflix
キャスト
スカーレット・ヨハンソン:ニコール
アダム・ドライバー:チャーリー
ローラ・ダーン:ノラ
アラン・アルダ:バート
レイ・リオッタ:ジェイ
ジュリー・ハガティ:サンドラ
メリット・ウェバー
アジー・ロバートソン:ヘンリー
ウォーレス・ショーン
マーク・オブライエン
ブルック・ブルーム
予告
あらすじ
女優のニコールと夫で舞台演出家のチャーリーが結婚生活に葛藤を抱え、離婚に向かっていく姿を描いたヒューマンドラマ。結婚生活がうまくいかなくなり、円満な協議離婚を望んでいた2人だったが、それまで溜め込んでいた積年の怒りがあらわになり、弁護士をたてて争うことになってしまう。
(出典元:映画.com)
映画『マリッジ・ストーリー』ネタバレ感想
離婚のお話だけど『マリッジ・ストーリー』
甘〜い結婚生活なんて全く描かれず、離婚へと突き進むある夫婦の争いを描いた作品なんだけど、作品タイトルはなぜか『マリッジ・ストーリー』(笑)。
離婚するまでは結婚しているわけだから皮肉を込めての『マリッジ・ストーリー』なのか、「結婚とは離婚のことである by ニーチェ」みたいな(ニーチェはそんなこと言ってないけど)哲学的な意味合いでの『マリッジ・ストーリー』なのか、どのような意図でこのタイトルをつけたのか理由はわからないけど、見終わった後は、あくまでも結婚生活の延長上に離婚があるんだなぁと、『マリッジ・ストーリー』感があって妙に納得するという。
離婚の理由
僕は幸運にも離婚経験がないので、離婚してしまう人の気持ちってわからないんだけど(いや、正直ちょっとはわかる)、本作のニコール(妻)とチャーリー(夫)のドロ沼離婚劇は妙にリアリティがあって、離婚経験のない僕でもちょっと理解できるのよ。なんて言うんですかね、あぁ…こうなっちゃうよねぇ感があるというか、わかりみが深いといいますか。
でね、離婚の理由が、浮気とか酒癖の悪さとか暴力とか、いかにもな理由じゃなくて(浮気はちょこっとあったけど)、夫に対する妻の積年の不満が爆発したという、どこの家庭でも起こり得る理由。これはね、男に対する警鐘ですよ、警鐘。自分は仕事をバリバリやってね、家庭は奥さんに任せてね、「いやぁ、うちは円満ですよ、円満」なんて思っているそこのあなた。奥さんの笑顔が本物なのか、仮面なのか…。明日突然離婚を突きつけられる可能性があるってことを僕たちは覚えておかなければ。家族サービス頑張ろうね(なんのこっちゃ)。
ドロ沼な展開へ
離婚へ向けてのドロ沼な展開がこれまた色々と考えさせられるのよ。
夫婦間で話し合って円満離婚しましょ、なんて平和的解決を望んでいたのに、結局弁護士を立てて争うことになってしまって、お互いの憎しみが増幅してしまう展開が切なくてね…。
おそらく離婚を切り出したニコールはチャーリーに対して不満があったとしても憎しみは無かったと思うんです。でも第三者である弁護士が絡んで来たことによって拗れちゃって、ニコールにとってチャーリーが憎むべき敵になってしまうんです。するとチャーリーも攻撃してくるニコールを敵だとして反撃するわけで。もうね、ドロ沼ってやつです。
ドロ沼になっちゃうと、最悪。相手の全てが気に入らなくなっちゃう。過去も現在も。
二人の結婚生活には良い思い出がたくさんあったはずなのに、幸せだったはずなのに、その結婚生活全てが不幸で悪夢だったような黒歴史に変換されちゃうんです。
(この気持ちは…何となくわかる。そりゃあ僕だって結婚する前は何人かお付き合いをした女性はいましたよ。円満にお別れしたこともあれば、拗れたお別れをしたこともありますよ。で、この拗れたお別れの時って…まぁ理由は置いといて…一緒に過ごした楽しい思い出さえも最悪な思い出に変わってしまうというか、何か腹が立つというか、そんな風に思ったりしませんでしたか?しましたよね?←同意を求めている。強く同意を求めている。)
感情が爆発するクライマックス
ニコールとチャーリーが二人で落ち着いて話し合うつもりが、お互いに感情的になって容赦なく罵り合ってしまうクライマックスシーンは、スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの演技が迫真過ぎてとっても素晴らしい名シーンだと思うんだけど…胸が締め付けられる思いで辛かったわ。
お互いがお互いの結婚生活での不平不満をほじくり返して爆発させるわけ。もうね、暴言のオンパレード。チャーリーなんて最後にはお前なんて死んでしまえばいい!とまで言っちゃうんだから…。
でね、その後にチャーリーが号泣するわけですよ。ニコールに対して酷いことを言ってしまった後悔もあると思うけど(酷いことを言われた悔しさも当然あると思う)、なぜこんな事になってしまったのか、こんなはずじゃなかったという自分自身に対する情けなさからくる号泣だと思うんです。そんな号泣するチャーリーの背中をさするニコール…この画が本作の全てを物語っていて、込み上げるものがありました。
愛し合って結婚したわけで、離婚するなんて夢にも思わなかったわけで、傷つけ合うつもりなんてなかったわけで、こんなはずじゃなかったわけで…。
不平不満を溜め込まない(まとめ)
離婚に関してはチャーリーだけじゃなくてニコールにも当然悪いところはあったはずで、そこがちゃんと描かれてなかったり(チャーリーが悪いように描かれ過ぎ)、この離婚のいちばんの被害者である息子に与える良からぬ影響も描かれず(息子落ち着き過ぎ)、この2点に関しては残念だったけど、円満離婚を目指していたものの意図せずドロ沼にハマっていく様はリアリティに溢れていてとっても面白かったです(ドロ沼離婚劇を面白いと言っていいのかどうか微妙だけど)。
本作を観て、結婚生活がうまく行く方法のひとつは、パートナーへの不平不満を溜め込まないことが大事なのかなって思いました(←偉そうに)。不平不満を言うのは疲れるし嫌だとは思うけど、溜め込んだ思いを後々爆発させるよりは傷は浅くて済むのかな、と。爆発しちゃったら修復は難しいような気がします(←偉そうに)。
パートナーに不満を持っている方や離婚を考えてる方が本作を観ると、もしかしたら相手に対するネガティブな気持ちに拍車がかかる可能性もあるので、本作はあまりオススメできないかも(苦笑)。うちは円満!大丈夫!なんて思っている方が観ると、反面教師になって、パートナーに対してより優しい気持ちで接することが出来るかもしれないので、積極的に見て欲しいですね。
(僕は本作を観てから、嫁さん何か溜め込んでないかなぁ…なんて思うようになりましたよ。ボク、家事ガンバル。)
そうそう、ドロ沼離婚劇を繰り広げだニコールとチャーリーを演じたスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの演技はホントに素晴らしかったです。特にスカヨハは良かったなぁ。気が強くて怒ったらちょっと怖いけど、芯があって美しくて素敵だったなぁ。スカヨハが嫁さんなら、僕なら絶対に離婚しないよなぁ…なんてバカなことを考えながら観てしまったことも告白しておきます。
おしまい。