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映画『スノーピアサー』【ネタバレ感想】ポン・ジュノ監督作品。設定は良かったけど残念な作品。

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氷河期の地球で生き残った人類が列車内で生活→階層社会が形成されているという設定や、貧困層の反乱という王道的な展開は抜群に良かったのに…ポン・ジュノ監督だったのに…残念な作品でした(´Д` )

 

55点。

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2014年2月7日

監督:ポン・ジュノ

原作:ジャン=マルク・ロシェット

   ベンジャミン・ルグラン

   ジャック・ロブ

脚本:ポン・ジュノ

   ケリー・マスターソン

制作国:韓国・アメリカ・フランス合作

上映時間:125分

配給:ビターズ・エンド

   KADOKAWA

 

 

キャスト

クリス・エバンス

ソン・ガンホ

ティルダ・ウィントン

ジェイミー・ベル

オクタビア・スペンサー

ユエン・ブレムナー

コ・アソン

ジョン・ハート

エド・ハリス

アリソン・ピル

 

 

あらすじ

2014年、地球温暖化を防止するため78カ国でCW-7と呼ばれる薬品が散布されるが、その結果、地球上は深い雪に覆われ、氷河期が再来してしまう。それから17年後、かろうじて生き延びた人々は「スノーピアサー」と呼ばれる列車の中で暮らし、地球上を移動し続けていた。列車の前方は一握りの上流階級が支配し、贅沢な生活を送る一方、後方車両には貧しい人々がひしめき、厳しい階層社会が形成されていた。そんな中、カーティスと名乗る男が自由を求めて反乱を起こし、前方車両を目指すが……。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『スノーピアサー』ネタバレ感想

良くもないけど悪くもない、でも残念

 

第92回アカデミー賞(2020年)作品賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督作品。(ちなみに本作『スノーピアサー』は『パラサイト』以前の作品です。)

 

『キャプテン・アメリカ』のクリス・エバンス、『パラサイト』のソン・ガンホが出演(個人的には『トレイン・スポッティング』のユエン・ブレムナーの出演が嬉しかった!)。そりゃあ、期待するなってのが無理な話。

 

 

 

しかし、僕の期待値を大きく下回りました…残念。

 

 

 

後方車両には貧困層が押し込められ、前方車両には富裕層が悠々自適に過ごしている、という列車内で階層社会が形成されているというアイデアはとっても良かったし、鬱憤をためた貧困層が反旗をひるがえし前方車両に進撃する展開に気持ちは高ぶりましたよ。強者に立ち向かう弱者の姿って、無条件に熱くなるじゃない。

 

トンネル通過中の真っ暗闇の中で、暗視ゴーグルを付けた兵士との戦いには戦慄したし(反乱軍は松明で応戦!アナログ!)、痛覚が壊れている用心棒みたいな男の異様な強さは恐ろしかったし(人外の強さ!)、列車内という狭小空間での殺し合いはスリリングでかなり面白かったですよ。金網デスマッチのような逃げ場のない戦場の緊張感たるやハンパないです。

 

前方車両では子どもたちが教育(洗脳)を受けていたり、若者たちがクラブで飲んだり踊っていたり、富裕層が普通に生活している様は面白かったです。貧困層の人間が目の前を通ってもノンリアクション→貧乏人は金持ちの目に入らないという皮肉っぷりも良かったですよ。

 

そう、良かったところもそれなりにあったんです。あったんですけど、全体的な評価は、う〜ん…良くもないけど悪くもないといった感じ。いや、どちらかというと残念。

 

 

 

クリス・エバンスとソン・ガンホの魅力不足

 

※ここからネタバレ&不満が多くなりますのでお気をつけください。

 

本作が残念だった最大の理由は、クリス・エバンス演じるカーティスとソン・ガンホ演じるナムグンの主要キャラ2人に魅力がなかったことではないかと、個人的には思うんです。

 

反乱軍の若きリーダーであるカーティスがピリッとしない。しなさ過ぎる。先頭には立っていたものの、圧倒的に強いわけでもなく、仲間を鼓舞するようなこともなく、過去の情けない自分を責めちゃうような精神的な弱さがある人間なんです。

 

良く言えば人間らしいんだけど、反乱軍を率いるリーダーとしてはあまりにも頼りない。自信なさげなんだよなぁ。僕ならついていくのは考えちゃう。

 

『キャプテン・アメリカ』のクリス・エバンスが演じるんだから、ゴリッゴリに強くて熱くて、カリスマ性がある人物設定の方が盛り上がったと思うんですよね。リーダーなんでしょ。もっとヒーロー感を出して欲しかった。

 

列車のセキュリティを設計したというナムグンの存在も中途半端でした。クロノールという麻薬の中毒者で、誰にも従わず我が道を行くようなめんどくさそうな男。でも、何かやってくれそうな雰囲気を漂わせていたんです。けど、雰囲気だけで特別なことは何もせず、ただ扉を開けていくだけという期待外れ感たるや。

 

最後なんて列車の扉を爆破しちゃいましたからね。いやいや、セキュリティのプロなら最後もしっかりと解錠しなさいよ。

 

 

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気になったところ

 

この際(どの際?)気になったところ上げてきます。

 

アメリカ人(カーティス)と韓国人(ナムグン)なので翻訳機を通して会話をするんだけど、それがまたまどろっこしい。ナムグンは英語を喋れる設定でいいじゃん。っていうか喋れよ。翻訳機を通したやりとりで笑いを取ろうとしていたのかもしれないけど笑えなかったです。

 

まぁ、翻訳機を使ってコミュニケーションをとるというリアリティを演出したのはわかりますよ。でも、ナムグンの娘が透視能力を持っているというリアリティのない設定はなんなんだ。特殊能力の説明なし。おい。特殊能力が鍵になる展開もなし。おい。

 

説明セリフが多すぎる。過去にこんなことがありまして…みたいなセリフでの説明が多くて、観てる側が負担になるというか、しんどくなるのよ。観客の想像力にゆだねる演出なのかもしれないけど不発でしたね。

 

回想シーンでみせてくれた方が一瞬で状況が飲み込めるし感情も入りやすいと思うんです。小説じゃなくて映画なんだから。見方によっては手抜きに感じられないこともない。

 

 

 

ダメな展開、悪くない結末

 

そして、ガッツリとネタバレいきます。

 

本作は階層社会に抗う貧困層の生き様をバイオレンス風味に仕上げた作品だと思っていたんです。カーティスとナムグンのキャラはいまいちだったとはいえ、強者に立ち向かっていく弱者の姿には熱くなったし、次々と倒れていく仲間たちを見て切なくなりましたよ。

 

なのに、支配者であるウィルフォードと貧困層の長老ギリアムが実は裏で繋がっていたという事実が判明するんです。これはダメでしょ。このオチは無いわぁ。物語を全部ぶち壊しちゃった。反乱軍の仲間たちは無駄死にですよ。

 

列車内の均衡を保つためにウィルフォードとギリアムのおじさん2人が結託して反乱を起こさせて人間を間引いていた…という自作自演。最悪な真実。階層社会は?強者に立ち向かう弱者の生き様は?そんなもの関係なくなっちゃった。俺の熱い気持ちを弄びやがって…。

 

ナムグンが外に出るために列車の扉を爆破したら、その爆破音で起きた雪崩に列車が巻き込まれるという大迫力の展開も、なんだかおマヌケに見えてしまって。雪崩発生は大誤算だったと思いますよ。反乱は起こすけど列車ごとぶっ壊そうとは誰も思ってない。自由を求めて反乱を起こしたはずが、反乱軍に途中参加したナムグンによってすべて台無しになるという悲劇(喜劇?)…。

 

 

 

個人的には『パラサイト 』のラストは気に入らなかったので(犯罪を犯した人間が裁かれなかったことには納得がいかない)、本作『スノーピアサー』のラストはまだ良かったです。

 

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階層社会をなくすには一度すべてを壊して作り直す→スクラップ&ビルドしかないんだ!というメッセージは伝わったし(僕解釈)、ナムグンの娘と男の子(名前忘れちゃった)が生き残って、新世界のアダムとイブになったという未来への希望が見えた(僕解釈)のも悪くなかったです。

 

 

 

面白くなりそうな設定だったのに、どうして残念な作品になっちゃったんだろう。

 

カーティスとナムグンをもっと魅力的に描いていれば、ウィルフォードとギリアムの関係性をもっと丁寧に描いていれば(会話のシーンくらいは入れてくれ)、列車内で起きた過去シーンを挿入していれば…作品の尺的に難しかったのかもしれないけど、絶対に面白くなった思うんだけどな。

 

おしまい。

 

 

 

映画『スノーピアサー』をもっと詳しく知りたい方へ

 

お前の感想じゃよくわからん!と、不満をお待ちの方に朗報。

 

映画紹介サイト『MIHOシネマ』さんで、映画『スノーピアサー』が詳しく紹介されているので、本作をもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

 

mihocinema.com