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映画『青くて痛くて脆い』【ネタバレ感想】吉沢亮と杉咲花のW主演!俺は楓の気持ちが痛いほどわかるぞ。

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『君の膵臓を食べたい』の作者、住野よるさん原作の青春サスペンス。

 

『仮面ライダーフォーゼ』(2011)で、仮面ライダーメテオ=朔田流星を演じている時から「彼は、売れる!」と確信していた吉沢亮さんと、テレビドラマ『夜行観覧車』(2013)で、荒れに荒れた中学生を演じている時から「この子、くる!」と確信していた杉咲花さんの2人が主演するということで、かなり期待して観てきましたが…

 

いやぁ、期待以上でしたわ。面白かったです。

 

85点。

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2020年8月28日

監督:狩山俊輔

原作:住野よる

脚本:杉原憲明

制作国:日本

上映時間:118分

配給:東宝

 

 

キャスト

吉沢亮

杉咲花

岡山天音

松本穂香

清水尋也

森七菜

茅島みずき

光石研

柄本佑

 

 

あらすじ

コミュニケーションが苦手で他人と距離を置いてしまう田端楓と、理想を目指すあまり空気の読めない発言を連発して周囲から浮いている秋好寿乃。ひとりぼっち同士の大学生2人は「世界を変える」という大それた目標を掲げる秘密結社サークル「モアイ」を立ち上げるが、秋好は「この世界」からいなくなってしまった。その後のモアイは、当初の理想とはかけ離れた、コネ作りや企業への媚売りを目的とした意識高い系の就活サークルへ成り下がってしまう。そして、取り残されてしまった田端の怒りや憎しみが暴走する。どんな手段を使ってもモアイを破壊し、秋好がかなえたかった夢を取り戻すため、田端は親友や後輩と手を組んで「モアイ奪還計画」を企てる。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『青くて痛くて脆い』ネタバレ感想

 

陰キャ男子とKY女子の青春ラブコメが、ある「嘘」をきっかけに一気にサスペンスへとシフトするインパクト。過去と現在を交互に描きつつ物語の真相に迫るというスリリングな展開。こんなはずじゃなかったのに…というダークで切ない結末。若者たちの青さや痛々しさや脆さが非常に上手く描かれていて「俺にもこんな青春、あったよなぁ…(遠い目で)」なんて懐かしい気持ちになったりもして、最初から最後まで飽きることなく楽しめました。(個人的にはラストシーンがすっげぇ好き。)

 

 

 

楓の気持ちが痛いほどわかる

 

本作の最悪は楓であるのは間違いないし、気持ち悪い奴であるのも間違いないと思うんです。でもね、やったことは問題ありとはいえ(ネタバレになってしまうので詳しくは書けないんだけど)、僕は楓の気持ちがわかり過ぎてしまってね…心が痛かったです。

 

自分が傷つくのも他人を傷つけるのも嫌。だから他人とは距離を取って生きていこうという人付き合いが苦手な楓に感情移入しまくりでしてね。何を隠そう、僕も昔は楓と同じタイプの人間だったんです。ホント、学生時代の僕とそっくり。顔以外は。ほっとけ。

 

そんな楓を寿乃は優しいって表現したけど、これは優しさじゃなくて、実は弱さなんですよね。他人を傷つけたくないんじゃなくて、自分が傷つきたくないから他人と距離をとるんです。嫌な思いをしたくないから。嫌われたくないから。

 

自分の思いや感情を隠して生きていく。争いごとを避けて生きていく。感情に波風を立てずに生きていく。さすがに40歳を過ぎたおじさんとなった今ではそんな繊細な気持ちは影も形も無くなっちゃったけど、昔の僕はそうだったし、人付き合いやコミュニケーションが苦手な人は、楓に共感する部分は多いんじゃないかなぁ。

 

人付き合いやコミュニケーションを避けると、自分が傷つくことも他人を傷つけることもないけど、それはそれで結構危険なんですよね。自分のことしか考えないから、常に自分が正義で正しいと思い込んでしまったり、良からぬことが起きると全部周りのせいにしてしまったり、闇の自己肯定感が育まれちゃうんですよね。

 

僕は運良く仲間に恵まれて、傷ついたり傷つけたりしながらもコミュニケーションをとれるようになって今があるんだけど、一歩間違えたら楓のように歪んでしまって、ダークサイドに落ちてしまう可能性もあったと思うんです(しれっとネタバレ)。

 

だから楓を見て他人事とは思えなかったし、仲間の大切さや(董介はやや頼りなかったけど)コミュニケーションの大切さ、そして自分の思いを伝えることの大切さを改めて感じました。

 

ダークサイドに落ちてしまった楓の「仕方なさ」もわかるので、やりきれない気持ちにもなって、何だか切なかったです…。

 

 

 

悪いのは楓だけなのか

 

楓が悪いのは大前提として、寿乃は悪くないのかというと、寿乃もちょっと悪いんじゃない?って僕は思っていて。楓に対してもう少し思いやりや配慮があってもよかったと思いますよ。

 

だってさ、寿乃が楓に声をかけてさ、サークル作ろうよって誘ってさ、2人きりで秘密結社サークル「モアイ」を作ってさ、楽しく活動していたのにさ、そこに突然脇坂(柄本佑さん)がサークルに入ってきてさ、脇坂と付き合い出すんだよ。いや、いいんですよ、付き合うのは。自由恋愛なんだから。

 

でもさ、黙って付き合うのは、あまりにも配慮が足りないと思う。付き合うのなら、楓にひと言あってもよかったんじゃないかな。3人のサークルで2人が付き合い出したら、楓が疎外感を感じてしまうのは当然だと思うし、居づらい気持ちになるのも当然かと。ちょっと考えればわかるじゃない。そりゃあ楓は2人の前から姿消すよ。

 

まぁ、寿乃が楓の恋心に気付いてないし、楓が寿乃に思いを伝えなかったことも悪いんだけど(っていうか、そもそも楓自身が寿乃への恋心に気付いてない可能性もあるけど)、楓に自分を重ねちゃってる僕としては「付き合うのなら言ってよぉ〜」っていう気持ちはありますよね。恋愛に関する唐突感って、良くも悪くも衝撃がありますから。

 

空気が読めない性格とはいえ、寿乃がほんのちょっとでもいいから、楓を思いやっていれば、話が変な方向に行かなかったように思うんです。まぁ、ほんのちょっとの思いやりを持つことって、案外難しいんだけどね…。

 

 

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満点キャスティング

 

吉沢亮さんと杉咲花さんの演技が抜群でしてね。主演のキャスティングは満点じゃないでしょうか。

 

僕は原作未読なので、主人公の楓と寿乃のイメージが原作と合っているのかどうかはわからないけど、すっげぇ良かったです。

 

吉沢亮さん、良いですよね。顔が良いのは言わずもがなですが、特に目が良いです。目力がある。目力のある俳優さんて、イっちゃってる目といいますか、狂気を帯びた目を表現するのがうまいんですよね。若手(?)俳優だと柳楽優弥さんが筆頭じゃないですかね。『ザ・ファブル』の小島とか『今日から俺は!!』の柳とか、狂った役がうまいですもん。(あ、柳楽優弥さんと吉沢亮さんの目の雰囲気って、似てません?)

 

繊細で優しい男なんだけど実は狂気を隠し持っている、という難しい役をめちゃくちゃうまく演じてました。クライマックスの楓の目、ヤバかったですもん。ただのイケメン俳優ではないですね、吉沢亮さんは。大河ドラマ『青天を衝け』(2021)も頑張って欲しいです。

 

杉咲花さんがこれまた良いんです。空気読めない女子で、下手したら寿乃はウザいキャラになっちゃうところですが、杉咲花さん自身が持っている爽やかさといいますか天真爛漫さがすっげぇプラスに働いて「あぁ、みんなに好かれそうだな、この子」みたいな愛されキャラになってるんですよね。そのおかげで、楓のダークさがより際立つというね。すごいよ、杉咲花さん。

 

もし寿乃を杉咲花さん以外の女優さん(例えば松岡茉優さんとか)が演じたら、寿乃があざとく見えてしまって、楓も悪いけど寿乃も何かムカつくよね、みたいになってしまって、感情の持っていきどころがわからないグズグズな作品になってしまったんじゃないかなと。

 

吉沢亮さんもそうだけど、持って生まれたその人の雰囲気って大事だよなぁなんて、杉咲花さんを見て思いました。朝の連ドラ『おちょやん』(2020年後期)も頑張って欲しいです。

(ちなみに松岡茉優さんがダメだとかそういうことではなくて、寿乃の役は杉咲花さんで大正解だということが言いたいのです。)

  

 

 

おじさんから若者たちへ

 

まだ何者でもない、楓や寿乃のような若者たちに、おじさん(僕のこと)からひとこと言わせてくださいよ。

 

自分は傷つきたくないし他人も傷つけたくないから他人とは距離を置く、という楓の生き方は無理ゲーなんですよ。100%無理(断言!)。

 

SNS全盛の今の時代は特に、傷つかずに生きるのは無理です。他人を傷つけないで生きるのも無理です。目を瞑っていても、耳を塞いでいても、お口にチャックをしていても、生きている限りは傷つくし傷つけてしまう。残念ながらそんな世界です。だから、僕たちは少しでも相手のことを理解して、少しでも相手のことを思いやって生きていくしかないんです。

 

それでも、やらかしてしまうことはあるんです。言われたくないことを言われたり、言ってはいけないことを言ってしまったり。楓のように暴走してしまったり…。

 

でも、君たちはまだ若い。何度でも立ち上がれるし、何度でもやり直せる。

 

若さは特権だよ!さぁ、明日を生きようじゃないか!(決まった…。)

 

最後は説教おじさんみたいになってしまいましたが、要はそういうことなんですよ(どういうこと?)。かなり突き刺さる作品なので、僕みたいなおじさんだけではなく、若者たちにも観て欲しい素敵な青春映画でした。オススメです。

 

おしまい。

 

 

 

映画『青くて痛くて脆い』をもっと詳しく知りたい方へ

 

お前の感想じゃよくわからん!と、不満をお待ちの方に朗報。

 

映画紹介サイト『MIHOシネマ』さんで、映画『青くて痛くて脆い』が詳しく紹介されているので、本作をもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

 

mihocinema.com