映画『王様になれ』【ネタバレ感想】the pillows（ザ・ピロウズ）結成30周年プロジェクト作品はとっても素敵な青春映画でした！
映画『王様になれ』を観てきました！
the pillowsの結成30周年プロジェクトとして制作された本作。企画物と思うことなかれ！とっても素敵な青春映画でしたよ。
the pillowsのメンバーをはじめ、GLAYやストレイテナーなどの豪華ミュージシャンたちが本人役で登場したり、なんだか得した気分になりました。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日：2019年9月13日
監督：オクイシュージ
原作：山中さわお
脚本：オクイシュージ
製作：坂本敏明
門池三則
中林千賀子
エグゼクティブプロデューサー：山口幸彦
三浦一城
プロデューサー：三宅はるえ
音楽：山中さわお
配給：太秦
上映時間：115分
キャスト
岡山天音：神津祐介
後東ようこ：藤沢ユカリ
岩井拳士朗：西小路健
奥村佳恵：曽田
平田敦子：モデル
村杉蝉之介：古志野
野口かおる：里子
オクイシュージ：大将
岡田義徳：虻川塁
山中さわお（the pillows）
真鍋良明（the pillows）
佐藤シンイチロウ（the pillows）
参加ミュージシャン
TERU、JIRO、ホリエアツシ、ナカヤマシンペイ、日向秀和、高橋宏貴、佐々木亮介、田淵智也、新井弘毅、鈴木浩之、yoko、楠部真也、平田パンダ、ビートりょう、星川ドントレットミーダウン、本間ドミノ、千葉オライリー、宮本英一、藤田恵名、宮崎朝子、松岡彩、吉川美冴貴
予告
あらすじ
カメラマンになる夢を抱きながらも、厳しい現実を前に苛立ちと焦りを感じながら叔父のラーメン店で働く祐介。初めて足を運んだ「the pillows」のライブで、思いを寄せるユカリを偶然見かけた祐介は、ユカリと話すようになる。祐介はユカリとの距離が近づいていくにつれ、徐々に「the pillows」の魅力にもはまっていく。
（出典元：映画.com）
映画『王様になれ』ネタバレ感想
主人公・祐介にイラつく
本作『王様になれ』の内容をひと言で言うと、「the pillows」をきっかけに仲良くなった男女の生き様を描いた青春映画、といった感じでしょうか。
良かったですよ、作品も音楽も。
主人公・祐介とヒロイン・ユカリの焦燥感や苦悩がストレートに伝わってきたし、ラブストーリーに傾かなかった展開には好感が持てたし、2人の明るい未来を予感させるラストは清々しかったし。で、音楽は全編を通してthe pillowsだから抜群だったし。
でもね、祐介はダメだった…。観ていてかなりイライラしちゃいました。主人公なのに、いまいち応援したいと思えなかったんですよねー。（主人公としてはかなり致命的…。）
まず、努力をしていないところがどうも好きになれなくて。カメラマンになりたいという夢があるのに全然努力してないの。お父さんが亡くなって、生活するだけで大変だとは思うんだけど、ちょっと空いた時間に写真を撮ったりするとか、カメラマンになりたいのなら何かしらやれるんじゃないのかなって思うわけですよ。
ただカメラマンになりたいっていう気持ちだけで、そこに向かって何も努力してないんですよね。撮りたいんだけどモデルを頼むにもお金がかかるしぃ…みたいな言い訳じみたことも言うし。
カメラマンのアシスタントのバイトもやる気が感じられないし。先輩に注意されたら「はいっ！」って返事してビシッとやればいいのに、なんか「は、はぁ…」みたいな感じなの。覇気が感じられない。
でね、祐介のダメさ加減を象徴するシーンがあって。
バイトしているラーメン屋でネギ抜きラーメンを注文されたのに、ネギ入りラーメンを出しちゃうんです。で、山中さわおさん（←お客さん役で登場）にネギ入ってるじゃんって指摘されて、入っているネギを取り除いてそのラーメンを出そうとするんですね。でもね、作り直せ！って怒られるんです。そりゃ怒られるのは当然なんですよ。ネギが苦手な人からしたら、ネギを取り除いてもネギが一度入って出されりゃそれはネギ入りラーメンなんです。取り除けばいいっていう問題じゃない。それで良ければ自分で取り除けるんだからネギ抜きの注文しないし。ちょっと考えたらわかるようなことなんだけどなぁ…。一度お客さんに出したものを再度出すのもどうかと思うし。でもね、謝らないんです、祐介は。
で、その日の夜に、俺はただのバイトなんだから間違えても仕方ねぇじゃねえかと、ネギくらいでキレてんじゃねぇよ、山中さわおにはガッカリだぜ！っていうくらいの勢いでユカリにグチるんだけど「バイトだろうが何だろうがお金を貰っている以上プロなんだからしっかりやれ」って言われて（言い回しは微妙に違うと思うけど確かこんなニュアンスのセリフ）ユカリに愛想尽かされるという。で、ユカリに言われてもいまいち理解できてない祐介の最悪。
自分は悪くない、悪いのは周りだ！みたいな、ちょっと色々人生を舐めてる感がハンパなくて、ダメな若者代表みたいな感じで、観てる方はイライラが募るんです。（あまりにもイライラしたので長くなっちゃったよ。）
祐介、失敗する。でも見直した。
ダメダメな祐介なんだけど、良いシーンもあって。祐介が山中さわおさんの後輩バンドのボヘミアンズの写真を撮ることになるんです。山中さわおさんからは、普通にボヘミアンズをカッコ良く撮ってくれとオーダーされるんですね。でもね、祐介。トチる。
撮った写真を見て、山中さわおさんに「主役はボヘミアンズじゃなくて、お前じゃねえかっ！」ってキレられるんです（言い回しは微妙に違うかも）。要はボヘミアンズを使って自分を出しちゃった（表現しちゃった）写真だったんですね。ある意味逃げちゃったんです。クライアントの要望に応えなかった、答えようとしなかった時点で、これは逃げです。
でもね、これはダメなんだけど、ダメなんだけど気持ちはわかるんです。デザイナーの端くれの僕としては。
自分の個展のための写真だったら自分を表現したものを撮っていいんだけど、クライアントがいるなら、要望があるなら、プロとして自分の表現は消さないとダメなんです。僕も若かりし頃はやらかしましたよ。お客さんに言われた通りに作っても全然カッコ良くないからって、勝手に自分がカッコ良いと思うものを作ってね。思いっきりダメ出しされてね。そして勝手にイラつくという…うん、苦い過去。
祐介もまずはボヘミアンズを普通にカッコ良く撮った上で、自分が思うボヘミアンズのカッコ良い写真を撮れば良かったんです。全部自分勝手に撮っちゃったもんだからキレられたんです、さわおさんに。
あー、やっちゃったな、って思ったけど、でもこれは前向きな失敗だと思って、僕は祐介をちょっと見直しました。
痺れる虻川のセリフ
この祐介のボヘミアンズ撮影やらかしちゃった事件があったにも関わらず、その後祐介にはピロウズのライブを撮るチャンスがやってくるんですね。そのね、くだりがね、たまらなく良いの。
やらかしちゃった後、祐介も努力して良い写真を撮れるようになって、師匠の虻川が祐介にピロウズのライブの写真を撮らせてやってくれないかと山中さわおさんにお願いするんです。でも、やらかした前科がある祐介に不安があるんです、さわおさんには（そりゃ当然）。
でもね、虻川がさわおさんに言うんですよ。
「ピロウズの写真はピロウズが好きな奴に撮らせたいじゃないですか」
と。そんな事言われたらさわおさんだって鬼じゃないからダメとは言えないですよね。
でね、さわおさんは虻川に聞くわけですよ。なんでそこまで祐介ためにしてやるんだと。その後の虻川のセリフがたまんないの。
「あいつの人生を雑に扱いたくないんですよ」
僕はしびれましたね。一度大きな失敗をしてるんだから、切り捨てる事も出来ただろうに、祐介にもう一度チャンスを与える。それも大迷惑をかけたさわおさんのライブ撮影という大役。次トチったら虻川の評価も落ちる可能性があるのに、祐介に撮らせる心意気がホントに素敵で感動しました。（あ、裕介だけじゃなくて虻川も撮るという保険付きだけどね。）
岡田義徳さんが虻川を演じたんだけど、めちゃくちゃ良かったです。若き名バイプレイヤーって感じで、作品に締まりが出て存在感抜群でした。いやぁ、ホントに良かった…。
ヒロイン・ユカリ
祐介があまりにもダメだったので長くなっちゃったけど、ヒロインのユカリも良かったです。
子どもの頃からある病気を患っていて、その事で周りに迷惑をかけてしまい、自分に対してネガティブな気持ちを持っているんです。でも、そんなネガティブな気持ちを隠して祐介の夢を応援するユカリが健気で切なくてね。
ユカリは30歳で、ピロウズは結成30周年。今のユカリはのピロウズの歴史と共にあるっていう設定もまた泣ける…。おそらくピロウズの曲に勇気付けられたんだろうなぁって、想像に難く無い。
でね、クライマックスでライブのステージに向かうピロウズの3人と手術室に向かうユカリのシーンがいい感じにシンクロして（ちょっとクサい演出なんだけど）、まさに決戦に向かうようでカッコ良いんです。かなりサブイボ。
圧巻のライブシーン
ライブシーンは圧巻でした。大画面でライブを観ることってほとんど無いですよね。だから大画面＆極音（極上音響上映。僕の観た映画館は音響にこだわっているのです。）で聴くピロウズはたまらんかったです。ホントにカッコ良かった。
ストレイテナーのホリエアツシさんの『ストレンジ・カメレオン』とかGLAYのTERUとJIROの『スケアクロウ』もめちゃくちゃ良かったです。聴き入っちゃいましたよ。で、TERUさんて歌上手なんですね！（ってファンに怒られそうだけどホントに初めてそう思ったんだもの…。）アコースティックで歌を聴くと、より力量がわかるんですね、素敵でした。（上から目線でナニサマ？）
演技する山中さわお
ピロウズの山中さわおさんもバッチリ演技されてました。キレる演技が主だったけれど（笑）、キレ具合が良かったです。ボヘミアンズの撮影をトチった祐介にキレるシーンなんてホントに怖かったです。実際にキレたらあんな感じなんだろうなぁって。すっごい迫力…。後日このシーンを見たボヘミアンズのメンバーがマジでビックリして、肩がビクーッとなったらしいです（笑）。
ちなみにピロウズの他のお2人（真鍋吉明さん＆佐藤シンイチロウさん）もバッチリ演技されてましたよ。セリフは無かったけど（笑）。
残念なところ
とっても良い作品だったんだけど、不満点もおりまして。
まずは祐介の描き方。夢を追う主人公としてはダメ過ぎて感情移入し辛くて。もう少し努力を見せる演出をして欲しかったなぁと。頑張ってるんだけどトチっちゃう、頑張ってるんだけど認めてもらえない。で、心折れちゃって努力しなくなるみたいな、祐介の葛藤が描かれたらもっと良かったなと思いました。だって、覇気は無いわ努力しないわバイトもシャキッとしないわで全然ダメなんだもん。
あと、もう少しピロウズのライブシーンを長くして欲しかったなと。映画『ボヘミアン・ラプソディー』のクイーンの演奏シーンほどの尺とまでは言わないけど、3、4曲くらい聴きたかったなぁ。もちろん生でライブを見るのが最高なんだろうけど、大スクリーンで見るライブもかなり良かったので。（個人的には『Funny Bunny』をライブシーンで聴きたかった！）
まとめ
the pillows結成30周年を記念した映画ということなので、ドキュメンタリーチックな作品かと思いきや、the pillows好きの若者の生き様が描かれたちゃんとした作品で、想像以上に良かったです。
そして、しっかりとした役者さんたちが素晴らしい演技を見せてくれて満足度高かったです。
そこにthe pillowsの曲が流れまくりだし、山中さわおさんを筆頭にアーティストたちの演技まで見られて、とってもオリジナリティーがあってお得な気持ちにさせてくれる作品でした。（特に山中さわおさんのキレる演技は必見！）
おまけ
そうそう。僕が観た上映回は山中さわおさんと監督のオクイシュージさんのトークショーがあったんです。（というかトークショーがある上映回のチケットを取ったんだけど。って、どっちでもいいか。）
色々なお話を聞けて楽しかったです。赤字にならないくらいの興行成績らしいことがわかったり、山中さわおさんはご自身のお母様のことを「ババア」って言ってたり（トークショー内では、ね）、作中で祐介が失敗したボヘミアンズの写真をご本人たちは気に入っていてライブで販売していることが発覚したり（笑）、ギターの真鍋吉明さんはよく喋るんだけど内容が無いってディスってたり（笑）、ドラムの佐藤シンイチロウさんの演技が堅いって笑ってたり、結成30周年を迎えて初めてファンに感謝の気持ちを持ったと山中さわおさんらしい笑える告白があったり…盛り上がったトークショーでした。
最後に
最後に映画のタイトルにもなっている『王様になれ』と僕の大好きな『Funny Bunny』を貼ってお別れしたいと思います。
the pillows "王様になれ" MV (full ver.)
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました！
ではまた。
