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映画『人数の町』【ネタバレ感想】中村倫也主演。自分の存在意義、存在価値を考えさせられるディストピアミステリー。

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『人数の町』という不穏なタイトル、そして怪しげなポスター、こりゃあ『ミッドサマー』的な何だか気味の悪い集落スリラーかも!観たい!って思い、鑑賞してまいりました。(集落スリラーって、なに?)

 

80点。

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2020年9月4日

監督:荒木伸二

脚本:荒木伸二

制作国:日本

上映時間:111分

配給:キノフィルムズ

 

 

キャスト

中村倫也

石橋静河

立花恵理

橋野純平

植村宏司

菅野莉央

松浦祐也

草野イニ

川村紗也

柳英里紗

山中聡

 

 

あらすじ

借金で首が回らなくなり、借金取りから暴行を受けていた蒼山は、黄色いツナギを着たヒゲ面の男に助けられる。蒼山のことを「デュード」と呼ぶその男は、蒼山に「居場所」を用意してやるという。蒼山が男に誘われ、たどり着いたのは、出入りは自由だがけっして離れることができない、ある奇妙な町だった。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『人数の町』ネタバレ感想

 

自分の意思と存在価値

 

ヤバイ奴らがいっぱい出てきて、ヤバイことがいっぱい起きて「僕はいったい何を見せられてるの?」みたいな、阿鼻叫喚なスリラーを期待していたものの、思ったよりちゃんとした作品でしてね。(なめてました。ごめんなさい。)

 

まぁ、人として生まれてきたからには、他人に流されないで自分の意思で行動したいし、その他大勢にはなりたくないし、存在価値のある人間でありたいと漠然と思ってはいるんです。こんな僕でも。だから主人公蒼山をはじめとする町の住人たちが「意味もわからずネット上で誰かをディスる」「誰かを装って選挙で投票する」「サクラとして飲食店に行列を作る」「よくわからないデモのパフォーマンスに参加する」といった、アイデンディティの欠片もないただの「人数」としての生き様は、ものすごく滑稽だし、情けないし、こうはなりたくないなぁなんて思うんですよ。何のために生きてるんだよと。

 

でもね、冷静に考えると、自分の意思でぇ…とか、存在価値がぁ…とか、自分で意識高めに言ってる割には、俺も町の住人たちと大して変わらないんじゃね?同じようなことやってんじゃね?とか、思い当たる節がちらほらと。

 

さすがに意味もわからないで誰かをディスることはしないけど、ツイッターで「#◯◯法案に反対します」みたいなことを深く考えずにツイートしちゃったり(ちゃんと考えろよ)、よくわからんけどこの候補者にとりあえず入れとくか、みたいに軽く投票しちゃったり(これは大人としてダメ)。意思を持たないただの「人数」に成り下がっていた自分を自覚させられたりもして。

 

町の住人たちを小馬鹿にして見てるけど、実はお前もそんなに変わらないぞ。目くそ鼻くそだぞ。って、荒木監督に面と向かって言われているようで「人として意思を持ってちゃんと生きなきゃな…」なんて反省した次第です。

 

 

 

人数とは表面的なもの

 

借金で首が回らなくなった者、DV夫から逃げている者、殺人を犯した者など、罪人だろうが罪人じゃなかろうが、みんな一緒くたに町の住人(=人数)として存在しているのがとても世の中を皮肉っていて面白いなぁって思いました。

 

確かにそうですもんね。選挙の投票にしたって、どんな人間が1票を投じても1票は1票ですもんね。清廉潔白な人でも、借金取りに追われている人でも同じ1票。人となりなんて関係ない。

 

失業者の数にしたって、会社が倒産したり病気を患ったりして、やむを得なく失業した人でも、働く気がなくて失業している人でも同じ失業者。理由はどうあれ失業者の人数に含まれる。

 

人の意思や気持ちをないがしろにして人数だけが一人歩きしている世の中って、うまく言えないけど理不尽を感じたり。表面的な人数だけを見るのではなくて、もう少し人数の意味というのも考えた方がいいのかなぁなんて真面目に思ったりもしました。

 

 

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中村倫也さんと石橋静河さんと立花恵理さん

 

中村倫也さんの演技が自然体で良いんですよ。普通の人を普通っぽく演じるのがうまいなぁと。主演なのに出しゃばってこない感じが良い。普通の人を演らせたら日本で3本の指に入るんじゃないかなぁなんて思わせるほどの自然で普通。癖がないんですよね。今まで特に中村倫也さんに注目してこなかったんだけど、これからはチェックしたいなぁなんて思いました。(ちなみに3本の指の残り2本は浅野忠信さんと山田孝之さんです。)

 

ヒロイン紅子を演じた石橋静河さんがこれまた良いんですわ。本作で唯一まともな人間だったけど、気が強そうで、融通がきかなそうで、自分が絶対に正しい!って思っている典型的な人で、なかなか癖が強い。美人さんなのでね、よりピリッとした感じが滲み出ていて良かったです。ハマってました。そして、好きです。

 

ただね、蒼山と紅子が好き合っちゃう展開は唐突すぎたかなぁと。蒼山はちょっとバカっぽいところがあるので突然「愛してます!」って言いそうだけど、身持ちの固そうな紅子が簡単に蒼山に惚れますかね。あまりにも唐突過ぎて、紅子が蒼山に惚れるキッカケになる重要なシーンを見落としたかと思っちゃいましたもん。2人が付き合う必要性があったのはわかるけど、ちょっと強引だったかなぁ。

 

そうそう。紅子の妹・緑を演じた立花恵理さん。発見した!っていう感じで、すげぇ良かったです。素敵な女優さんを発見しました。(テレビドラマ『ニッポンノワール』の刑事役で出演されていたらしいです。)美人さんでスタイル良くて色気もあってクールで…いろんな役をやれそう。夫のDVに苦しんでいた過去、町での生活を謳歌している現在と、振り幅の大きい役だったけど、うまく演じられてました。辛い過去の反動だと思うんだけど、Mっ毛全開でしてね。個人的には蹴っ飛ばされたいです(いや、そういうシーンがあったのでね…)。

  

 

 

最後に

 

町の住人の中に悪い奴がいなくて、案外みんなまともだったり、全体的にフワッとしていて緊張感がなかった点がちょっと物足りなかったです。もう少し死を感じさせるような雰囲気、ディストピア感を出したほうが良かったような気がしました。まぁ、良作でしたけどね。

 

人のふり見て我がふり直せって言葉が当てはまるような作品で、自分の存在意義や生き方をあらためて考えさせられました。しっかり自分の人生を生きようって。

 

と同時に、人数の役割を全うするだけで、衣食住は保証され、自由に夜の男女交遊ができるのならば、それもありかな…なんてゲスな思いを捨てきれない自分もいることを最後に記したいと思います。

 

おしまい。

 

 

 

映画『人数の町』をもっと詳しく知りたい方へ

 

お前の感想じゃよくわからん!と、不満をお待ちの方に朗報。

 

映画紹介サイト『MIHOシネマ』さんで、映画『人数の町』が詳しく紹介されているので、本作をもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

 

 

mihocinema.com