映画『ザ・ファブル』【ネタバレ感想】殺し屋休業中の殺し屋の物語。アクションスター岡田准一×柳楽優弥の怪演に注目!
映画『ザ・ファブル』観てきましたよ!
2017年度講談社漫画賞受賞。現在、週刊ヤングマガジンで絶賛連載中の南勝久の原作漫画を岡田准一主演で実写映画化。
実はわたくし、原作漫画の大ファンでして。コミックスも全巻(18巻まで)持っていまして。『ザ・ファブル』ガチ勢でして。
実写映画化決定に狂喜乱舞し、期待と期待と少しの不安とが入り混じった気持ちで、この日を心待ちにしていました…。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2019年6月21日
監督:江口カン
原作:南勝久
脚本:渡辺雄介
主題歌:レディー・ガガ「ボーン・ディス・ウェイ」
配給:松竹
上映時間:123分
キャスト
岡田准一:ファブル/佐藤アキラ
木村文乃:佐藤ヨウコ
山本美月:清水ミサキ
福士蒼汰:フード
柳楽優弥:小島
向井理:砂川
木村了:コード
井之脇海:黒塩(クロ)
藤森慎吾:河合ユウキ
宮川大輔:ジャッカル富岡
佐藤二朗:田高田
光石研:浜田
安田顕:海老原
佐藤浩市:ボス
南出凌嘉:幼少期のファブル
六角精児:バー「バッファロー」マスター
粟島瑞丸:松沢
モロ師岡:鉄板焼き屋「チッチ」店長
好井まさお:貝沼
倉本美津留:古着屋店主
藤原光博:工場長
予告
あらすじ
超人的な戦闘能力を持つ伝説の殺し屋ファブルは、育ての親であるボスから、1年間殺し屋を休業して普通の人間として生活するよう命じられる。もし誰かを殺したらボスによって処分されてしまうという厳しい条件の中、「佐藤アキラ」という偽名と、相棒ヨウコと兄妹という設定を与えられ、大阪で暮らしはじめたファブルは、生まれて初めての日常生活に悪戦苦闘。そんな中、偶然知り合った女性ミサキがある事件に巻き込まれたことから、ファブルは再び裏社会に乗り込んでいく。
(出典元:映画.com)
『ザ・ファブル』の魅力全開!
『ザ・ファブル』の魅力といったら、いっぱいあるんだけど、僕はその中でも次のふたつが特に魅力的だと思っていてね。
ひとつは伝説の殺し屋ファブル=佐藤アキラが身を置いていた裏社会の暴力性や血生臭さを描きつつも、表の社会での日常生活に悪戦苦闘する佐藤アキラのコミカルさも描かれるという、そのギャップの面白さ。緊張と緩和。
もうひとつは、アキラの殺し屋としての「人を殺すため」のスキルを「人を助けるため」に使うという発想の転換の面白さ。知恵と工夫。
このふたつが『ザ・ファブル』最大の魅力だと僕は思っていて。
本編では、血しぶきが飛び散るストレートな残酷さや、小島を中心に裏社会の暴力性もしっかりと描かれていたし、アキラの超絶猫舌っぷりやジャッカル富岡爆笑シーンや全裸シーン(岡田准一さん頑張った!)などのコミカルさも原作に忠実に描かれていたので、かなり満足度が高かったです。
アキラの殺し屋としてのスキルを使って、ミサキと小島を救出してピンチを切り抜けるというクライマックスシーンも緊張感があって良かったです。緊張感の中にもちょこっとコミカルさも盛り込んだりして(原作通りなんだけど)しっかりと『ザ・ファブル』らしい仕上がりになってましたね。
そして、『ザ・ファブル』の濃いキャラクターたちも魅力たっぷりに描かれていましたねー。キャラクターに関しては後述しますが、真黒組の連中はみんな迫力があったし(高橋がいなかったのは残念)、デザイン会社オクトパスの田高田社長の良い意味での適当さも良かったし、ヨウコのチャラチャラした美人妹っぷりも良かったし、ミサキの真面目な可愛さも良かったです。
(ミサキのお色気シーンが少しでもあればもっと良かったのになぁ…なんて実はこっそり思っています。お色気シーン観たかったよね?)
そして海老原と小島のラストシーンは愛情たっぷりで原作同様にグッときて…うん、切なくて良かった。
人気漫画の映画化なので、ハードルは高かったと思いますが、原作の良さを引き出しつつもオリジナルシーンも盛り込まれて、とっても魅力ある作品に仕上がっていたと思います。
映画『ザ・ファブル』見どころ
岡田“佐藤アキラ”准一
めっちゃカッコ良かった…岡田“佐藤アキラ”准一…抜群でしたよ、バツグン。
本編冒頭。
ヤクザ組織の会合にひとりで乗り込み、激しいアクションシーンが繰り広げられるといういきなりクライマックスな展開に、一気に『ザ・ファブル』の世界に引き込まれました。
もうね、岡田准一さんキレッキレ。
目にも留まらぬ早業とはこの事だとばかりに、動きが速い速い。大げさではなくて目で追いきれない感じで、次から次へとヤクザの構成員たち20〜30人くらいを(もっとかな?)バッタバタと倒していくんです。もちろん無傷で。
岡田“佐藤アキラ”准一強ぇって思わせるには十分過ぎるほどのアクションシーンでしたが、ここにプラスアルファの演出が加わって、ただ強ぇってだけじゃなくて、あ、だから佐藤アキラって殺しの天才なんだねっていう凄みを僕たち観客に感じさせてくれるんです。
スカウターの演出。
これにはビックリやられました。
自分と相手との距離が即数値化されたり、自分が撃つ銃の弾道が視覚化されたり、自分が撃つべき相手の順番が表示されたり…瞬時に相手の情報を視覚的に得られるスカウターのような能力をアキラは持っている、という演出。
このスカウターの演出によって、アキラの天才的な殺しのスキルに説得力が出てくるんです。瞬時に相手の情報を視覚化できるからサクサクバタバタと倒せるんだなと。天才なんだなと。
アキラの強さを岡田准一さんのキレッキレなアクションとスカウター演出によって表現したんですね。お見事!江口カン監督ブラボー!
柳楽優弥の凄み
原作の小島って昔ながらのヤクザって感じで、とにかく凶暴なんです。回りくどいことはしないで、目的を果たすためならどんな手でも使うという。かなりヤバい奴。
出所してきて早々に人を撃ち殺すくらいですからね…。
そんなヤバい小島を演じた柳楽優弥さん。最高に狂っていて怖かった!最狂ってやつです。そして、今作で誰よりも存在感を放ってましたね。
柳楽優弥さんの演じた小島は原作とは少し違って、単に暴力的な怖さだけじゃなくて、ここにいやらしさというか変態性をプラスしてきたんですね。(簡単にいうと怒りに任せて人を撃つのではなくて、笑いながら人を撃つ、みたいな。)
また柳楽優弥さんの声って、優しくてねっとりとした粘着質な声なので(良い意味でですよ)、より変態性が増すというか…。
柳楽優弥さんがスクリーンに出てくるだけで緊張感が高まりましたね。笑っているけど目の奥では笑ってない変態的な狂気を孕んだ小島…必見ですよ。小島を原作を超えたキャラクターに昇華させた柳楽優弥さんブラボー!
豪華キャストが演じたキャラクターたち
人気漫画の実写映画化の成否って、原作のキャラクターに俳優さんたちがいかに寄せられるかによると僕は思っていて。ストーリー的に面白く仕上がっていても、キャラクターに俳優さんがハマらないと、それだけでアウトだと思っていて。
今作はみんなハマってましたねー。
言わずもがな佐藤アキラはビシッとハマっていたし(岡田准一さん!)、小島に至っては原作のキャラクターを上回る魅力を放ってました(柳楽優弥さん!)。
ヨウコ(木村文乃さん!)もミサキ(山本美月さん!)も田高田社長(佐藤二朗さん!)もボス(佐藤浩市さん!)もフード(福士蒼汰さん!)もハマってましたねー。原作のイメージを外してないと思いますよ。いや、フードはカッコ良過ぎたかな…。
でね、心配だったのは海老原(安田顕さん!)と砂川(向井理さん!)。キャストが発表された時、原作とイメージが違うやないかい!ミスキャストやろがいっ!って原作ファンは絶対に思ったはずです。大丈夫かいなと心配したはずです。僕もそのひとり。
全然大丈夫でしたね。
めっちゃハマってました。
無問題。
海老原を演じた安田顕さん。
海老原ってビジュアル的には短髪で体はガッチリしているんです(体型的にはインパルス堤下)。安田顕さんとは似ても似つかないビジュアル。
でも、安田顕さんは海老原でしたね。完全に。風貌は違えど、原作通り、一本筋の通っている男気溢れる海老原を好演してました。めちゃめちゃカッコ良かったです、安田顕さん!
砂川を演じた向井理さん。
これまた原作とは似ても似つかない風貌で。だって原作では砂川ってハゲてるしおっさんだし。向井理さんとは似ても似つかない砂川なんですけど…これがハマってました。
小島に挑発されてガチキレする砂川なんて、これぞ砂川!って感じで最高でしたよ。向井理さんが砂川に見えましたよ。クライマックスでの小島との殴り合いのシーンもダサくて最高に良かったです。
ダサい砂川をカッコ良い向井理さんが演じるなんて…砂川も天国で喜んでると思いますよ(意味深)。
アキラとボスの関係性
アキラとボスとの関係性って『ザ・ファブル』において結構重要で。
アキラに殺し屋を休業させたのは、アキラの事を思っての事なんですね。天才的な殺し屋としての能力は、サヴァン症候群の類のものなんです。で、一般人に紛れて普通の生活をすることによって、殺し屋としての能力を消滅させたいとボスは思っているんです。
アキラに死んで欲しくないから。
アキラに一般人として生きて欲しいから。
原作にはないボスとアキラが組織の裏切り者を処分する回想シーンは(賛否両論ありそうだけど)、ボスとアキラの主従関係以上の関係性が色濃く出ていて、物語に深みを与えたので僕は良かったと思いますね。
この原作にはない親子のような関係性を描いた回想シーンはかなり印象的だったので、逆に今後の連載にこのシーンが反映されるかも、描かれるかも…って個人的には思ってます。
映画『ザ・ファブル』残念だった点
ヨウコの魅力が伝わらなかった
ヨウコの扱いがいまいちでしたね。ヨウコの良さが出てなかったという感じでした。ヨウコに関してはかなり不満。(個人的に好きなキャラクターなので特に不満…)
木村文乃さんが演じていたので、ヨウコの美人具合はよく出てましたよ。ロン毛に茶髪で目の下にホクロもあって、ビジュアル的には満点。
原作ではヨウコって人並外れた記憶力を持っているんです。その能力を持っていることが原因でヨウコの両親は殺されてしまうんですね。だからヨウコの記憶力って作品にとっては重要なんですけど…まったく出てきませんでした。両親が殺されたというエピソードは入れなくていいけど、人並外れた記憶力を発揮するシーンは盛り込んで欲しかったな…。
でね、ヨウコって酒がめちゃくちゃ強いんです。ドランククイーンって作中では呼ばれてるくらいに。今作の冒頭でヨウコと河合が飲んでるシーンがあったんですけど…あれ、いる?って思っちゃいましたね。
河合が何とかヨウコを落とそうとして頑張るんだけどヨウコに潰されて弄ばれて終わるという壮大な対決なのに、中途半端でちょっとよくわからなかったですね。あんな中途半端な感じだったら本編では思い切ってカットして、スピンオフでヨウコvs河合をガッツリ観たかったなと。ちょっと残念。(ドランククイーンのシーンを入れるならせめて「ペ、ダイヨチャ」は入れて欲しかった…)
長くなったけど、ヨウコに関しては最後です。
ヨウコって実は、めっちゃ強いんです。だって、ヨウコも組織の一員だから。その辺の殺し屋よりよっぽど強いんです。アキラには全然歯が立たないけど。
その強さをハイキック一発で表現しちゃうのはどうなの?って。もう少し相手の攻撃を受け流してからのハイキック一発の方がより強さが際立つんじゃね?って。
原作を知らない方が今作でのヨウコを観てどう思ったのかなってちょっと心配です。ただの賑やかしに見えないかな。見えるよね?並外れた記憶力を持つ組織の一員としてのヨウコの魅力があまり出てなかったのが残念です…。
ボスの存在感あり過ぎ
ボスとアキラの回想シーンは良かったと思うんですけど…ラストシーンはちょっといただけなかったな。
生き残ったフードとコードをボスが撃ち殺しちゃうとかナシでしょ。考えようによっては、アキラに対して過保護に見えちゃうし。
せめて堂々と撃ち殺さないで、もしかしたらボスが始末したのかな?って思わせるような、ボスをチラ見せで終わらせて欲しかった気もします。ボスが表に出過ぎ。存在感あり過ぎ。
原作では今回の「小島編」の後にインテリヤクザの「宇津帆編」があるんですけど、そこに鈴木っていう殺し屋が新たに登場するんですね。個人的には続編がある事を期待しているので、フードとコードをその鈴木に始末して欲しかったなと。なんだこいつは?新手の殺し屋か?って観客に思わせつつ『ザ・ファブル2』を匂わせて欲しかったな。
まとめ
主人公・佐藤アキラが魅力たっぷりに描かれ、裏の主人公・小島に至っては原作以上の魅力を放ち、他のキャラクターたちもほぼ原作のイメージ通りで。基本的には原作に忠実に描かれているので、原作ファンにとっては満足度の高い作品だったと思います。
原作ファンとしてはもちろん物足りない部分もありましたが、それは続編『ザ・ファブル2 宇津帆編』(あるのか?)で補って欲しいですね。江口カン監督!続編よろしくお願いします!
で、原作を未読の方には、ぜひぜひ原作を読むことを強くオススメします!映画『ザ・ファブル』にハマった方は原作を読むことでより深く楽しめるし、ハマらなかった方は…読んだらハマります。アキラ兄さんに惚れます。
素晴らしいエンターテイメント映画に仕上がっていて、最後まで飽きずに楽しめました。僕はオススメしますよ!
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた。