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映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(ワンハリ)』【ネタバレ感想】タランティーノの描いたシャロン・テート事件は予想外の結末を迎えたのです!

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映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観てきました!

 

実は、何を隠そうタランティーノ作品を観るのは『キル・ビル』以来なんです。ひっさびさのタランティーノ作品をガッツリと堪能しました。

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2019年8月30日

監督:クエンティン・タランティーノ

製作:デビッド・ハイマン

           シャノン・マッキントッシュ

           クエンティン・タランティーノ

製作総指揮:ジョージア・カカンデス

                      ユー・ドン

                      ジェフリー・チャン

脚本:クエンティン・タランティーノ

制作国:アメリカ

上映時間:161分

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

 

 

キャスト

レオナルド・ディカプリオ:リック・ダルトン

ブラッド・ピット:クリフ・ブース

マーゴット・ロビー:シャロン・テート

エミール・ハーシュ:ジェイ・シブリング

マーガレット・クアリー:プッシーキャット

ティモシー・オリファント:ジェームズ・ステイシー

ジュリア・バターズ:トルーディ

オースティン・バトラー:テックス

ダコタ・ファニング:スクィーキー・フロム

ブルース・ダーン:ジョージ・スパーン

マイク・モー:ブルース・リー

ルーク・ペリー:ウェイン・モウンダー

ダミアン・ルイス:スティーブ・マックィーン

アル・パチーノ:マーヴィン・シュワーズ

カート・ラッセル:ランディ

ゾーイ・ベル:ジャネット

マイケル・マドセン:ハケット保安官

 

 

予告


『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』本編映像

 

  

あらすじ

テレビ俳優として人気のピークを過ぎ、映画スターへの転身を目指すリック・ダルトンと、リックを支える付き人でスタントマンのクリス・ブース。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに神経をすり減らすリックと、いつも自分らしさを失わないクリフは対照的だったが、2人は固い友情で結ばれていた。最近、リックの暮らす家の隣には、「ローズマリーの赤ちゃん」などを手がけて一躍時代の寵児となった気鋭の映画監督ロマン・ポランスキーと、その妻で新進女優のシャロン・テートが引っ越してきていた。今まさに光り輝いているポランスキー夫妻を目の当たりにしたリックは、自分も俳優として再び輝くため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演することを決意する。そして1969年8月9日、彼らの人生を巻き込み、ある事件が発生する。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ネタバレ感想

シャロン・テート殺害事件

 

ハリウッド史上最悪の悲劇と言われている「シャロン・テート殺害事件」を題材にした本作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(以降ワンハリ)。

 

1969年8月9日に起こった実在の事件。

本作でマーゴット・ロビーが演じるシャロン・テート。駆け出し女優であり、ロマン・ポランスキー監督(後に『戦場のピアニスト』でアカデミー賞監督賞を受賞)の妻でもあった彼女は、1969年ハリウッドの自宅で惨殺される。犯行は、狂信的カルト集団の指導者チャールズ・マンソンの信奉者によるものだった。マンソンが狙った人物が彼女の家の前住民であったため、「人違い」殺人という悲劇的な事件として、今もハリウッドに暗い影を落としている。事件当時、彼女は妊娠8か月だった…。

(出典元:ワンハリ公式サイト)

 

 

コアな映画ファンなら当然知っているハリウッドでの惨劇なのかもしれないけど、僕はこの「シャロン・テート殺害事件」をまったく知りませんでした。初耳。

 

本作は実在の事件「シャロン・テート殺害事件」を題材にした映画ってことで、ネットでちょこっと調べてから観に行きました。(といっても、どのような事件だったのか、というくらいで、事件当時のハリウッドとか時代背景とかヒッピー文化とか、深くまでは調べなかったけど…。)

 

実在の事件なので、結末はわかっていて、絶対に血生臭い惨劇は起きるはずで。それもバイオレンスが得意な(?)タランティーノ監督が撮るってことで、こっちは凄惨なラストが待っていると期待して…というと語弊があるけど、覚悟して緊張感を持って観ていたんですね。

 

ところが、予想外の想定外の衝撃的なラストが待っていて…。(結末が最高なんだこれが!)

 

 

 

実はポジティブな映画

 

 

「シャロン・テート殺害事件」を題材にした作品だから、「死」を感じさせて、ちょっとネガティブな映画なのかなぁ…なんて思っていたんだけど、むしろ逆で、「生」を感じられるとってもポジティブな映画でした。

 

ネガティブ要素であるシャロンの出番が思ったより少なかったということもあるんだけど、とにかく本作の主人公、ディカプリオ演じる落ち目の俳優=リック・ダルトンブラッド・ピット演じるリックの友人で専属のスタントマン=クリフ・ブースの生き様がめちゃくちゃカッコ良くてね。(特にリックの生き様は◎!)

 

落ち目のリックに共感し、クールなクリフには羨望の眼差しを向け、ぶっちゃけ観てる間は「シャロン・テート殺害事件」のことなんて頭の片隅に追いやられてましたからね。(あ、でも、片隅にはあったので、「死」への緊張感は常に感じてました。)

  

リックとクリフの生き様を観ているだけでも十分に面白かったし感動したし勇気づけられたし、観終わった今となっては『ワンハリ』を描く上で「シャロン・テート殺害事件」なんてどうでもよかったんじゃね?なんて元も子もないことをちょっと考えたり考えなかったり…。

 

とにもかくにも、ネガティブな映画かと思わせといて実はポジティブな映画だったという『ワンハリ』。良い意味で僕の期待を裏切ってくれました…さすがっす、タランティーノ。

 

 

 

60年代のハリウッドを描いたスタイリッシュな映画

 

僕は70年代生まれなので、60年代のハリウッドのことは当然知らないし、わからないんだけど、本作が当時のハリウッドの雰囲気を表しているというのなら…めちゃめちゃスタイリッシュでカッコ良いです、ハリウッド。

 

音楽、ファッション、車、街並み…などなど、どれをとっても僕にはカッコよく感じられて。なんて言うんだろう…若干くたびれた感じを漂わせてはいるんだけど、尖っていてギラギラして自信に満ち溢れているイメージがするんですね。

 

そのタランティーノが描いたハリウッドの世界に、リックとクリフがハマっていて。彼ら2人が『ワンハリ』のスタイリッシュさに拍車をかけるんです。特にクリフを演じたブラピなんて水を得た魚のように躍動しまくってね。スタイリッシュな世界との相性が抜群なんですわ。ブラピが。クリフが。

 

ちなみに本作のパンフレットにはリックの主演した映画のポスターが載っているんです。今ではなかなかお目にかかれない手書きのポスターデザインがとってもオシャレで素敵で。デザインに興味のある方にはパンフレットは買いだと思いますよ。

 

 

 

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中年おじさんに響くリック・ダルトンの生き様

 

落ち目の俳優リック・ダルトンの生き様が最高過ぎて僕の心にビッシビシと響いて。

 

元々は主役を張っていたんだけど、若手俳優からの突き上げによって、主役ではなくて若手俳優を引き立たせる悪役を演じることが多くなったリック。

 

落ち目になった今の状況を認めたくないんだけど、認めざるを得ない状況なんです。だって主演のオファーが来ないんだから。でもね、投げやりにならずに与えられた役を全力で、プライドを持って演じ続けるんです。落ち目になったとしても全力投球するリックの生き様が中年おじさんの僕には輝いて見えて泣けるんです(僕は落ち目では無い)。

 

明日は我が身ってわけじゃないけど、何があっても全力でやらないとな、若いもんに負けてられねぇなって奮い立たせられるんです(僕は落ち目では無い2回目)。

 

でね、ある撮影で、リックは共演した子役の女の子トルーディに「あなたの今日の演技は最高だったわ」なんて言われるんです。10歳くらいの女の子にそんなこと言われたら、普通なら、大人なら余裕の笑顔で「ありがとう。でも、君の演技も最高だったぜ。」なんて言いそうなもんだけど、リックは号泣するんです。大号泣。そんなリックを見た僕は胸熱。

 

多分、落ち目となって自信も無くしつつあって、もしかしたら自分はもう俳優として必要とされてないんじゃないか…ってくらい思い詰めていたのかもしれないですね。だから子役の女の子とはいえ、自分の演技が認められたことがたまらなく嬉しかったんでしょうね。リックの純粋さ、人間臭さが垣間見れて、最高のシーンでした。

 

他には、NGを出した自分に腹が立って「あんなに練習したのに昨日飲み過ぎたからNGを出したんじゃないか!俺のバカ!もうアルコールを断つ!」みたいな感じで自分に対して怒り心頭だったのに、言い終わった瞬間に置いてあったウイスキーを口にして、あ、飲んじゃダメダメ!って速攻ウイスキーを吐き出すという、まるで1人コントのような爆笑シーンもあってね。これまた人間臭くて最高で。

 

要はリックって一生懸命で表情豊かで人間臭いんですね。その人間臭さをディカプリオが好演してるんです(ノイズになりそうなほどの耳障りな咳をしたり、豚のように鼻を鳴らしたり、痰を吐いたり…おっさんディカプリオがホント最高!)。ディカプリオの出演している作品を全部観てるわけじゃないけど、僕が観た過去のどの作品より『ワンハリ』のディカプリオがいちばん好きかも。

 

 

 

クールでカッコいいクリフ・ブース

 

リック・ダルトンの友人で専属スタントマンのクリフ・ブース。

 

リックは生き様がカッコ良かったけど、クリフは中身じゃなくてヴィジュアルや仕草がクールでセクシーでカッコ良いんです。奥さん殺しの容疑や、ブルース・リーと揉めたり(笑)、怪しいヒッピーをぶっ飛ばしたり、リックと違ってワイルドで破天荒なところがあって。そこがまたカッコ良くて。(やんちゃな男って大好物でしょ?そこの奥さん!)

 

そんな、クリフを演じたブラッド・ピットの色気がたまらんのです。男の僕から見ても惚れちゃうほどの色気ムンムンで。多分スクリーンから漏れてきてたんじゃないかな、ブラピの色気が。

 

だって、愛犬ブランディ(終盤に大活躍!)にエサをあげるシーンですらカッコよく見えるんだから。エサの缶詰を開けて、足下に置いてある器にエサをビチャっと雑に入れるだけの何てことのないシーンなんだけど…それだけで画になる。犬にエサをあげる姿がセクシーな男って、見たことある?(って誰に聞いている?)

 

でね、ダメ押しが、リックの家のアンテナを修理するシーン。屋根の上でシャツを脱いで上半身裸になるんだけど…めっちゃ体が締まってるの

 

ブラピ、55歳。

 

すげぇの…55歳であの引き締まった体。

 

奇跡の55歳。

 

(僕はまだ40代だし、鍛えればブラピみたいにセクシーな男になれるのかなぁなんて一瞬思ったりもしたけど、素材が違うから無理だと一瞬で思い直したのは言うまでもありません。)

 

クリフにはちょっと共感はできないんだけど、圧倒的にクールでセクシーでカッコ良くて。ブラピにはハマリ役でしたね。

 

 

 

タランティーノの怒り?願望か?素晴らしい結末

 

ここからスーパーネタバレに入ります。

知りたくない方は引き返してくださいね。

 

 

 

サクッと結末を言っちゃうと「シャロン・テート殺害事件」は起きませんでした!タランティーノが描いた『ワンハリ』の世界ではシャロン・テートは死にませんでした!

 

狂信的カルト集団の指導者チャールズ・マンソンの信奉者とされている殺害犯(男1人、女2人、女1人逃亡)が登場した時はいよいよか、と。ジェットコースターに乗ってゆっくりと上に登っていくような感覚っていうのかな。この先に起きることがわかっているドキドキ感、緊張感が高まる感覚。

 

でもね、殺害犯が入った家はシャロン邸ではなくてお隣のリック邸だったんです…まさかの勘違い侵入(笑)観てるこっちも何がなんやらプチパニック。

 

で、シャロン邸に入るはずだったのに誤ってお隣のリック邸に入ってしまった殺害犯は、クリフとリック(とクリフの愛犬ブランディ)によって撃退されるんです(撃退っていうかみんな死んだかも)。

 

男はブランディに股間を噛みつかれるし、女はクリフに顔面をぐっちゃぐちゃにされるし、もうひとりの女はリックに火炎放射器でカリッカリにされちゃうという…すっごいやられっぷり。

 

このエグさはタランティーノの怒りを表しているような気がしました。だって、これでもかっていうくらいにクリフがボッコボコにするんです。フルボッコってやつです。笑っちゃうくらいにフルボッコ(笑)。

 

ハリウッドに暗い影を落とし、女優(それも妊娠中!)を惨殺した殺害犯に対する、チャールズ・マンソンに対する、映画人としてのタランティーノの怒りだと思うんです。よくもハリウッドを汚してくれたな、よくも前途有望な女優を殺してくれたなと。いわば、自分の作品を通して奴らに復讐してるような気がしました。(シャロンは人違いで殺されちゃったんだけど、本作では侵入する家を間違えた殺害犯が殺されちゃうという皮肉っぷりがそれを表してる気がします。)

 

そして、僕がこの結末からもうひとつ感じたことは、タランティーノの願望を描いているような気もしました。

 

本作ではそれほど登場回数は多くなかったけど、シャロンってキラキラしていて天真爛漫な素敵な女性に描かれていたんですね。せめて自分の映画の中でだけでもいいから、シャロンには生きていて欲しいと願っているようにも感じました。

 

殺害犯たちを撃退した後に、リックとシャロンがただの隣人から友人になるくだりはとっても微笑ましくて良かったです。最後の最後でフィクションの人物であるリックの人生と実在していた人物シャロンの人生が交差した瞬間は感動的でもありました。

 

クリフとリック(とブランディ)によってタランティーノの映画では「シャロン・テート殺害事件」は起こらなかったという、まさかの展開、そして爽快な気持ちのいい結末で、とっても後味が良かったです。

  

 

 

まとめ 

タランティーノの描いた60年代のハリウッドはとってもスタイリッシュだったし、その世界に生きたリックとクリフも魅力的でした。

 

と、同時に「シャロン・テート殺害事件が起きる」といった緊張感もあって、最後の最後まで油断ならない展開に引き込まれました。

 

2時間を超える作品って、個人的には苦手というか、どこかで集中力が途切れちゃったりするんだけど、本作の上映時間161分=2時間41分が長く感じないほどに面白い作品でした。

 

結末は予想外で想定外で、そして希望を感じさせる終わり方でとっても良かったです。ハリウッドの歴史を変えたわけだから、賛否両論ありそうですが…僕はこの結末は好きですね。

 

『キル・ビル』以来のタランティーノ作品でしたが、タランティーノ節健在!って感じで嬉しかったですね。未見の作品も観てみたくなりました。

 

勇気と希望を感じさせてくれた『ワンハリ』。素敵な映画でしたよ!オススメです!

 

 

 

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

ではまた。