映画『“隠れビッチ”やってました。』【ネタバレ感想】主演の佐久間由衣好演!コメディーで人間ドラマな快作!みんな愛し愛されたいのさ…
映画『“隠れビッチ”やってました。』を観てきました!
軽快でコメディーな前半からシリアスで人間ドラマな後半へと意外な展開をみせた、とっても面白い作品でした。
隠れビッチのひろみを演じた佐久間由衣さんがこれまた良かった!
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2019年12月6日
監督:三木康一郎
原作:あらいびろよ
脚本:三木康一郎
製作総指揮:木下直哉
企画:黒澤満
主題歌:Kitri「さよなら、涙目」
配給:キノフィルムズ
上映時間:112分
キャスト
佐久間由衣:荒井ひろみ
小島晃:村上虹郎
大後寿々花:木村彩
小関裕太:安藤剛
森山未來:三沢光昭
前野朋哉:川田利光
片桐仁:永田裕志
前川泰之:小橋健太
柳俊太郎:坂口征二
戸塚純貴:船木誠勝
笠松将:田上明
田中偉登:秋山準
岩井拳士朗:森島
山本浩司:ひろみの上司
荒井涼子:渡辺真起子
荒井雄二:光石研
予告
あらすじ
異性からモテ続けることで承認欲求を満たしてきた女性ひろみは、相手の気持ちだけをもてあそびながら体の関係は断るというゲームのようなやり口で恋愛を楽しんでいた。そんな彼女の様子に、ルームメイトであるバイセクシャルの晃と恋愛に失敗してばかりの親友・彩は驚きを隠せずにいた。見た目は清楚だが計算し尽くした言動で男を落とすハンターぶりから、彩は彼女を「隠れビッチ」と名付ける。そんなある日、職場に気になる男性が現れたことで初めて自分の本音と向き合うことになったひろみは、晃からの叱咤を受け、「自分に必要なもの」を探し始めるが……。
(出典元:映画.com)
映画『“隠れビッチ”やってました。』ネタバレ感想
隠れビッチひろみ
主人公・荒井ひろみの隠れビッチっぷりが軽快でコメディーな前半戦。
男に告白させたら勝ち、みたいなゲーム感覚で男の気持ちを弄ぶ歪んだ性格の持ち主で。告白させたらその場では返事をしないで帰宅→「勝ったぞー!首取ったぞー!」的な派手なガッツポーズ→缶ビールで祝杯→飲みながら男にやんわり断る…まさにビッチ。
ルームメイトの彩に「この隠れビッチが!」って言われても「好きって言われて自分の自信がチャージされれば良くね?」みたいな軽口を叩くイケイケドンドンな荒井“隠れビッチ”ひろみ。
で、告白させるまでの手練れ感がハンパない。草食系男子にはスキンシップを多くして積極的に仕掛けるという、ボクシングでいうインファイトなスタイル。逆にギラギラした肉食系男子には清楚感を出して恥じらいをみせて仕掛けるという、足を使ったアウトボクシングなスタイル。自在なスタイルを持つなかなかのスキルを持ったボクサーで…じゃなくてビッチで。
やってることは人としてかなりエグいことをしているんだけど、僕はこんなビッチひろみに意外と嫌悪感は無かったんだよなぁ。
ここまで計算し尽くして男に接する女子は少ないかもしれないけど(案外多いのか?)、男をその気にさせちゃう女子って普通にいるんじゃね?とか思ったり。僕にも心当たりがないわけではないし…(昔の話ダヨ!)。
どちらかと言うと、加害者のひろみに腹が立つより、被害者である弄ばれた男を見て(自分を見ているようで)笑っちゃった方で。男ってさ、単純だからさ、すぐその気になっちゃうのよ(ってオレダケ?)。ホラー映画を一緒に観ていて「キャッ!」とか言って手を握られたり抱きつかれたりしたらさ…それだけで、あれ?この子、俺に気があるんじゃね?とか思うし、一緒に飲んでいて妙にボディタッチが多いと、あれ?この子、え?そういうこと?って思うし。単純で可愛いんだ、男ってさ…フッ(遠くを見つめて微笑む)。
僕からしたら、女子って少なからずみんな隠れビッチなところがあるんじゃないのかなぁ…なんて思っていたりいなかったり(怒られそうなので言葉を濁して逃げる文章)。
恋するひろみ
同じ職場のイケメン安藤に、ひろみの隠れビッチが発動するんだけど…という中盤戦。
今までの男と同様に、安藤はひろみに落ちるんだけど、ひろみも安藤に落ちてしまうという展開に。隠れビッチとして男と接してきたひろみの心に少しばかり変化が出てきて、人を本気で好きになるという感情が生まれて。
男の気持ちを弄んできた隠れビッチひろみも年貢の納め時かと思いきやある日、安藤がバイクの後ろに女性を乗せているところを目撃してしまい、ひろみは怒って別れてしまうんです。
今まで男に対して散々ビッチなことをしてきたのに、ただバイクの後ろに女性を乗せているのを見ただけなのに怒って別れるってどの口が言っとるんじゃ!ってひろみに突っ込みたい気持ちがあったけど、ひろみの本性が見えた結構重要なシーンで。
ひろみには触れられたくない過去があったり、ルームメイトの晃からはひろみの自信のなさを指摘されたり…と、なぜひろみは隠れビッチをやっていたのか(隠れビッチになってしまったのか)。その理由が判明する怒涛の終盤へ。
本性が露わになるひろみ
前半〜中盤と続いたコメディーの流れから、ひろみの過去や本性が明らかになり一気にシリアスで人間ドラマな終盤戦へ。コメディーな展開も面白かったけど、終盤の人間ドラマな展開も衝撃的で良かった。
ひろみは職場の先輩・三沢と付き合うんだけど、ひろみが隠れビッチを発動しなくても、ありのままのひろみを愛してくれる大人な男で。ひろみは隠れビッチとして生きてきて、安藤と出会って人を好きになることを知って、いよいよ人から本当に愛されることを知るんですよ。普通ならここでハッピーエンドですよ。
でもね、ひろみは何でも受け止めてくれる三沢に対して、本性をさらけ出して誤った愛情表現をしちゃうんです。何でも自分の言う通りにしてくれることが三沢の愛で、自分の言う通りにしてくれないと、それは三沢の愛が足りないからで。私のことを愛してるなら言うこと聞いてよ!、みたいな乱暴な関係性を求めちゃう。そして最終的に三沢に暴力を振るうようになっちゃう。DVってやつ。
突然怒り出して暴力を振るって、一気に物語に緊張感が走る衝撃的シーンで。あのチャラついたひろみがガチギレ。それも何であなたは私の言うことを聞いてくれないの!みたいなヤバいキレ方。
ひろみには幼少期に父親から暴力を受けていたという触れられたくない辛い過去があって(母親も暴力を受けていた)。この辛い過去が原因で、愛情不足→自己否定→自分に自信がない→隠れビッチをやってしまったわけで。
ここまではわかる。自分に自信が無くて、愛し方や愛され方がわからないまま大人になってしまったひろみには同情も出来る。暴力を振るっては絶対にダメなんだけど同情の余地は、ある。
で、ひろみが過去に受けた父親の暴力を思い出して、遺伝を匂わすくだりには戦慄(ちょっぴりホラー)。暴力を振るう父親を嫌悪してたのに自分も同じことをやっていると。ひろみの三沢への態度が育ってきた環境によるものだけではなくて、遺伝によるものである可能性を示唆する展開は意外性があって良かったです。
ひろみの中に眠っていた、隠されていた本性が爆発した三沢への暴力シーンは、彼女のこれまでの人生が過去や父親によって精神的に支配されていたのかがわかり、物語がピリッと締まって一気に緊張感が高まりました。
号泣するひろみ
三沢から距離を置きたいと言われて号泣するひろみがね、ちょっと切なくてね。
三沢の家からシェアハウスに戻ってきて号泣しながら叫ぶわけですよ、ひろみが。「自分の全てを愛してくれることがこんなに嬉しい事だって知らなかったぁぁぁー!どうしたらいいのかわからないぃぃぃー!」(←セリフはうろ覚え)と、彩と晃に号泣告白をするわけですよ。弱いところを見せなかったひろみが、ひとりのか弱い女子のように号泣する姿には感動したし、本当のひろみが爆発したとっても良いシーン。
隠れビッチをやっていながらも、ひろみは苦しかったんですよね。
本当は愛したかったし、愛されたかったんです。
ただ、愛がわからなかったんです…。
ラストシーンは必要か(ネタバレ)
三沢と距離を置いたことよってひろみは自分自身を見つめ直し、そして三沢と再び付き合うようになり同棲へ…と、最後はハッピーな結末へ(そして微笑むワタクシ)。
が、しかし!最後の最後に別れたはずのイケメン安藤から「やっぱりお前のことが好きだから会いたい」的なラインがひろみに届くというビックリなシーンが。三沢と同棲中なんだから、今さら何を言っとるねん安藤!とばかりに相手にしないひろみ…とはならない。ちょっと気になってるの、ひろみ。安藤に会いに行きそうな雰囲気を漂わせて終わるんですよこれが。
いやぁ…この(エンドロール後の)ラストシーンいる?隠れビッチを卒業して、過去を乗り越えて、たどり着いた幸せ。ハッピーエンドで良くね?もう一波乱いらなくね?と思ったり。この先は観た方の想像にお任せします的な手法も有りだけど、今回はいらなかったかな。ちょっと残念な余韻。
佐久間由衣さんが抜群!
ひろみを演じた佐久間由衣さんが抜群に良くて。喜怒哀楽をのびのびと爽やかに演じられていてね、思いっきり好感が持てるんです。ひろみって男の気持ちを弄ぶ隠れビッチなんだから、かなりネガティブな印象になりそうなんだけど、なんか可愛げがあるんですよね、佐久間由衣さんが演じると。
個人的には雰囲気が長澤まさみさんに似ているなぁなんて思ったんだけど…どうでしょ。今後かなり飛躍しそうな感じがプンプン匂ってましたよ僕は好き。
まとめ
隠れビッチなひろみを面白おかしく描いたコメディーな前半戦→隠れビッチなひろみが恋に落ちてしまったラブストーリーな中盤戦→隠れビッチだったひろみが愛し愛されることを知り苦悩する人間ドラマな終盤戦。
辛い過去が足かせとなって、人として未成熟だったひろみが本当の愛を知ることによって成長する物語。『“隠れビッチ”やってました。』という「冷やし中華始めました」的な、軽いキャッチコピーのようなタイトルからは想像できないほどの重めの作品でちょっとびっくりしたりしなかったりで。
人間誰しも本性を隠しながら生きているし、時には自分に嘘をついたり、日々葛藤して生きていると思うんです。もしかしたらひろみのように、幼少期に親に暴力を振るわれた過去がある人もいるかもしれない。けど、人を愛したり、人に愛されたりすることによって、人って変われるし幸せになれるんだと思わせてくれる素敵な作品でした(ラストシーンを除けばね)。ちょっと真面目にまとめてしまったけど、俳優さんたちの演技も良かったし、僕は好きな作品ですよ。オススメです。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた。