映画『天気の子』【ネタバレ感想】帆高と陽菜の愛と正義の物語!衝撃の結末は賛否両論か?
映画『天気の子』を観てきました!
新海誠監督の前作『君の名は。』から3年ですって。
もうね、期待しかありませんよね。
音楽も前作に引き続きRADWIMPSだし。
期待しかありませんよね。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2019年7月19日
監督:新海誠
原作:新海誠
脚本:新海誠
製作:市川南
川口典孝
企画:川村元気
プロデュース:川村元気
キャラクターデザイン:田中将賀
絵コンテ:新海誠
音楽:RADWIMPS
主題歌:RADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」
配給:東宝
上映時間:114分
キャスト(声の出演)
森嶋帆高:醍醐虎汰朗
天野陽菜:森七菜
夏美:本田翼
天野凪:吉柳咲良
安井:平泉成
高井:梶裕貴
冨美:倍賞千恵子
須賀圭介:小栗旬
予告
あらすじ
離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の果てにようやく手に入れたのは、怪しげなオカルト雑誌のライターの仕事だった。そんな彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続ける。ある日、帆高は都会の片隅で陽菜という少女に出会う。ある事情から小学生の弟と2人きりで暮らす彼女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。
(出典元:映画.com)
映画『天気の子』ネタバレ感想
ノンフィクションのような帆高と陽菜
こんなチープな言い方はしたく無いんだけど…新海誠監督って天才。だってさ、40歳を過ぎたおじさんを泣かせるんだよ。おじさんが泣くんだよ。凄くね?
親とのトラブルが原因なのか、思春期特有の得体の知れない鬱屈さが原因なのか、結局最後まで理由は明かされなかったけど、家出してきた帆高。
母親が病死して小学生の弟と2人暮らし(この設定だけでちょっと泣ける…)。中学生なんだけど年齢を偽ってバイトして生活費を稼ぎ、いよいよ夜のお仕事に手を出そうとする陽菜。
そんな2人が新宿歌舞伎町で出会うという、なんともフジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」に出て来そうな設定が良かったですね。
この帆高と陽菜のような事情ってリアルにあると思うんです。とにかく現状が嫌になって家を飛び出す少年少女。何らかの理由で親に頼れないから自分でお金を稼ぐしかない少年少女。ひとりの大人として、子を持つ親として、悲しいけど今の時代を思いっきり反映しているような気がして、グッと入ってくるわけですよ、この2人の生き様が。僕の胸に。おっさんの胸に。
で、舞台が歌舞伎町。僕も若かりし頃に色々とお世話になった歌舞伎町(あんな事やこんな事…ありました)。僕の知ってる歌舞伎町はもっと小汚なくてギラギラしたイメージがあるんだけど、スクリーンに映し出された歌舞伎町からは、ギラギラ感をあまり感じられなかったですね(ちょっと残念)。ここ数年、夜の歌舞伎町には行ってないので、今はちょっと小綺麗になってるのかな。ま、場所によるか。(っていうか映像が美しいからそう感じるのかな。)
帆高と陽菜の背景、そして舞台は歌舞伎町って事で、めちゃくちゃ身近な物語に感じさせてくれて、『天気の子』の世界に引き込まれました。
『君の名は。』は老若男女誰でも同じような感覚で楽しめる作品だと思うんだけど、『天気の子』は観る人の年齢や立場によって感じ方が大きく変わるような作品だど思うんです。
中学1年生の息子を持つ親として、ひとりの大人としての目線で本作を観た僕は、主人公帆高とヒロイン陽菜にはグサグサやられました。
家出少年・帆高
帆高なんて普通に問題児ですよね。
家出するし、拳銃ぶっ放すし(2回)、警察に補導されるし逃げ出すし…と、なかなかの少年で。ヤバい子で。
自分の気持ちに正直で衝動的に行動しちゃったり、周囲への迷惑を考えずに行動しちゃったり…と(人に拳銃を向けるのはいかがなもんかと思うけど)、危なっかしくてヤバいんだけど、僕のようなおじさんにとっては、帆高の陽菜への一途な気持ちや自分自身の正義に基づいた行動力にどこか羨ましさを感じちゃうんです。
大人になると一途な気持ちなんて無くしちゃうし(って僕だけかもしれないけど)、自分自身の正義のためだけに行動することって難しくなるし、そもそも忙しい日々の生活で自分の本当の気持ちとか正義とかそれ自体がわからなくなるし。
だからこそ、陽菜のためになりふり構わず行動を起こす帆高には羨ましさもあり、感動もさせられちゃうんです。
特に陽菜にもう一度会いたいがために帆高が警察署から逃走し、鳥居のある廃ビルに向かって線路をひた走るシーンにひたすら感動しちゃって、おじさん涙が止まらなくてね。映画館で涙が止まらなくなるなんて、生まれて初めてかも。(レイトショーで1人で観に行ってよかったわ。)
帆高に対して、ちょっと引いた目で見ていたんですけど、彼の真っ直ぐな気持ち、一途な気持ちがそんな僕の引いた気持ちを無にしてしまいました…。人の真っ直ぐな気持ちって理屈なんか無くて感動するんだなぁってあらためて思った素晴らしいシーンでした。
余談ですけど、その帆高が廃ビルに向かってひた走るシーンはTVでちらっと流れていたりするんだけど、それを見るたびにウルっときちゃいます。かなり引きずってます…。
可哀想すぎる陽菜(と凪)
陽菜には同情しまくって設定だけで泣けちゃう。両親はいないし、周りに頼れる大人はいないし、小学生の弟・凪を食べさせないといけないし…。
本当は15歳なのに18歳と偽ってバイトして、年齢がバレてクビになって、夜の仕事に堕ちていきそうになるところを帆高に助けられるんだけど、生きるために必死で、とにかく健気なのよ、陽菜は。陽菜にとっては姉弟で生き抜く事が正義なんです。生きるためにはなりふり構ってられないんです。
そんな彼女が晴れ女になって(しまって)、帆高と出会って、周りの人たちの笑顔のために晴れ間を届けて(売って)楽しく過ごす展開はリズムが良くて、観てるこっちも心が踊る感じでとっても楽しかったです。帆高も陽菜も凪もみんな可愛い。陽菜(と凪)の可哀想な背景とのギャップがなんとも切なくて良かったです。
楽しいシーンの連続もどこかで何か起きるんじゃないかっていう不穏な空気も流れていて。でね、晴れ間を届けた代償として人柱として陽菜が空に行っちゃうという展開は、もうね、可哀想すぎて。残された弟の凪を思うと辛くてね。どうなっちゃうのこの先は!?って。陽菜が消えてしまった時の衝撃といったら…息が止まりそうでしたよ。
須賀の存在感
帆高の親代わり的な須賀の存在感は抜群でした。はじめは胡散臭かったけど、物語が進むにつれて人間臭さが出てきてとっても良かったです。小栗旬さん上手だったなぁ。
須賀の良い意味での大人の対応や振る舞いは好感度高かったし、帆高と陽菜の2人のシーンも素敵で良かったけど、須賀の絡んだシーンは印象的で心に残りました。
須賀本人は奥さんに先立たれて、大事な1人娘はお義母さん側に引き取られちゃって。一緒に暮らせるように申請中なんです。だから何かトラブルを起こしたくないんです。
「もう大人になれ」ってお金を渡して帆高を実家に返そうとするシーンは、冷たいように思えるけど、僕は気持ちはわかるというか(だったらそもそも帆高を受け入れるなよって思ったりもしたけど)。娘と一緒に暮らすためにはトラブルを回避したいから帆高を厄介払いしてしまう。けど、それは帆高のためでもあるって自分に言い訳しているんですよね、多分。僕もありますよ、そういうこと。めんどくさかったり、保身のために他のことを言い訳にしちゃうこと。痛いほど須賀の気持ちがわかる…。
あとね、物語後半で、須賀の事務所での刑事とのやり取りシーン。帆高が陽菜を探すために逃走したことを聞いた須賀が涙を流すシーン。これもヤバかった…。
多分、帆高と自分を、陽菜と亡くなった奥さんを重ね合わせたんでしょうね。愛する人と会いたいがために猪突猛進する帆高の気持ちがわかり過ぎたからこその涙。愛する奥さんともう一度会いたい…という自分の心に蓋をした奥さんへの気持ち、その感情が溢れ出ちゃったんでしょうね。このシーンで僕も感情のスイッチが入っちゃいました。(この後に帆高が陽菜に会いに行くためにひた走るシーンが展開されますからね…そりゃ泣くわ。)
物語最後に帆高が自分たちのせいで世界を変えてしまったような事を須賀に言うんです。でもね、須賀は帆高に言うんです。自惚れんなと。もともと世界なんて狂ってるんだと。
もちろん須賀は帆高と陽菜の「天気の巫女」のストーリーを信じていないからこそのこのセリフだと思うんだけど、この言葉は帆高を救ったと思うんです。お前らみたいな若者2人が何かやらかしたくらいで世の中が変わるわけないじゃないかと。世界はもともと狂ってるんだから何が起きたって不思議じゃないんだと。アホかと(そこまでは言ってないけどこんなニュアンス)。
須賀の言葉は僕にはエールにも聞こえました。何かをやらかしちゃって失敗したり落ち込んだりすることもあると思うけど、そんなことは大したことないんだよと。世の中誰も気しちゃいないし、気に病むことじゃないんだよと。
可愛い夏美
夏美はね、可愛かった。大人のようで子どものようで。帆高や陽菜の気持ちもわかるし、須賀の気持ちもわかるし。良い意味であまり本筋に関係してこないし、本作の潤滑油的なキャラクターでした。安心感を与えてくれて、僕にとっては本作のオアシスでしたね。彼女が出てくるとホッとするっていうか。
でも最後に大仕事をしましたねー。帆高を乗せてのまさかのカーチェイス(バイクチェイス?)。パトカーから逃げるという暴挙でしたけど、新海誠作品らしからぬ(?)スピード感溢れる逃走シーンで意外性があって面白かったです。ルパン三世も顔負けの逃走っぷりでした。
本田翼さんが夏美の声を演じたんだけど、声優っぷりは上手とは言えなかったけど…個人的には声が好きなので僕は満点評価です。(反論は受け付けません。)
美しい映像
情景描写もほんっとに素晴らしかったですね。水たまりに雨の雫が落ちる様もリアルで良かったし、夏なのに雪が降る描写もとっても美しくて良かったです。雪が降る幻想的な雰囲気は、この世の終わりを感じさせてちょっと怖かったですね、僕は。
本編通じて映像は美しくて素晴らしかったんだけど、その中でも打ち上げ花火の描写が圧巻でした。こうも花火を立体的に美しく描けるもんかね…って観ながら感動を通り越して感心しちゃいました。そんなに長いシーンじゃなかったけど、しばらく見ていられるほどの素晴らしい映像でした。
情景描写だけではなく、もちろん作品全体は新海誠監督の思い描いたイメージなんだと思うけど、そのイメージを具現化した、美しい作品を具現化したアニメーターの方々にも拍手を送りたいですね。
見どころ色々
帆高が陽菜と夏美にエロい目線をついつい向けてしまった気持ちは男としてわかるし、陽菜の小学生の弟・凪が生意気で可愛かったし、帆高が拾ってきた猫のアメが3年後にはめっちゃおデブちゃんになっていたのも可愛かったし、高井刑事のヘアースタイルは気になったし、安井刑事は平泉成さんだったし(そのまま)、『君の名は。』をクロスオーバーさせて、瀧と三葉を登場させるというサービス精神も良かったし(四葉とテッシーと早耶香も登場していたらしいけど、僕は気づかなかった!)…と、見どころ&ツッコミどころはたくさんありました。
『天気の子』を2回観たんだけど…まだ他にも何か隠されてるような気もする。もう一度見る必要があるかも。
衝撃の結末
なかなかの衝撃でしたね。帆高が人柱となるはずの陽菜を助け出したために異常気象が続いて、3年間雨が降り続き東京が水没するという。
賛否両論ありそうですねー。帆高と陽菜の2人の幸せだけのために、大勢の人々の生活を犠牲にしていいのか!とか、帆高の自分勝手な行動が肯定的に描かれ過ぎじゃないか!とか、物語としてはバッドエンドじゃないか!(これはいいか)とか。
僕は結末には満足してます。大満足。新海誠監督が何を言いたいのか、何を伝えたいのかとかは、僕にはわからないし知る必要もないと思ってるけど、僕は周りの目を気にしないで好きなように生きて良いんだよっていうエールを送られているように感じました。その結果、世界の仕組みを変えてしまっても良いじゃないかと。もともと何が狂っていて何が正常なのかもわからない世の中だし。
帆高は自分たちが世界を変えてしまったようなことを言ってるけど、それは2人だけのせいじゃない可能性だってあるわけで。物語が始まった時から異常気象だったわけで。そもそも狂っていたわけで。帆高が天気の巫女である陽菜を助けたことがトリガーになった可能性もあるけど、それはホントに単なるきっかけに過ぎなかったのかなと。この世の中、突然何かが起きることって少なくて、積み重なった小さなことが膨れ上がり、ちょっとしたことで爆発するってことが多いと思うんです。
だからもともと東京水没に向かって進んでいた未来に、偶然帆高と陽菜の2人の一途な愛を貫いた行動(陽菜を助けた行動)が重なってしまったんだと。僕はそう思いたい。帆高と陽菜の愛にケチをつけたくない。これが僕の結論。
だから僕は須賀の言葉を借りて、恋に臆病になっている若者たちに言いたい!
いや、全人類に言いたい!
「自惚れんなよ」
と。
うまくいこうが失敗しようが、世界は狂ってるんだ。
何が起こっても不思議じゃないんだ。
あれこれ考えずに愛を叫ぼうじゃないか!(話変わってないか?)
まとめ
前作『君の名は。』とは違って、かなり考えさせられる物語でした。家出、両親のいない子ども、大人、愛、正義、現在、未来…何が正しくて何が間違いなのか、ひとりの大人として考えさせられました。
とはいえ、作品としては登場するキャラクターはみんなそれぞれがそれぞれの立場で一生懸命に生きていて魅力的で、清々しかったし、映像も美しくて、ポップに作られていてとっても楽しかったです。
醍醐虎汰朗さんの帆高、森七菜さんの陽菜、小栗旬さんの須賀、本田翼さんの夏美。みんなハマっていて素晴らしかったです。
『君の名は。』と比べるのはいかがなものかと思うけど、好みで言えば僕は『天気の子』の方が好きです。僕自身、中学1年生の息子がいるということ、そして年齢的なものもあると思うけど、感情移入がしやすかったかな。
本作を観た(小学生、)中学生、高校生、大学生、社会人、既婚の方、未婚の方、子どものいる方やいない方…などなど、いろんな立場の方の意見や感想を聞きたくなるような映画でした。僕はオススメしたいです、『天気の子』。
では、映画『天気の子』主題歌、RADWIMPS「愛にできることはまだあるかい」を聴いてお別れしましょう。素敵なバラードです。
それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!
ではまた。