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映画『イソップの思うツボ』【ネタバレ感想】上田慎一郎節炸裂!学園ドラマが一転復讐劇に…。ヒロイン井桁弘恵さんに要注目!

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映画『イソップの思うツボ』を観てきました!

 

映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督作品ということで、内容を知らない方が絶対に面白いはず!と思ったので、『イソップの思うツボ』に関する情報を全く入れずに観てきました。

 

結果、大正解でした。

  

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2019年8月16日

監督:浅沼直也

   上田慎一郎

   中泉裕矢

プロデューサー:井西政彦

        久保田傑

アソシエイトプロデューサー:廣瀬敏

協力プロデューサー:佐藤美由紀

          冨永威允

脚本:上田慎一郎

共同脚本:浅沼直也

     中泉裕矢

劇中イラスト:ふくだみゆき

配給:アスミック・エース

上映時間:87分

 

キャスト

石川瑠華:亀田美羽

井桁弘恵:兎草早織

紅甘:戌井小袖

斎藤陽一郎:戌井連太郎

藤田健彦:田上

高橋雄祐:八木圭佑

桐生コウジ:兎草信司

川瀬陽太:近藤

渡辺真起子:亀田美紗子

佐伯日菜子:兎草裕子

 

予告

 


映画「イソップの思うツボ」予告編(出演:石川瑠華 )

 

あらすじ

カメだけが友達の内気な女子大生・亀田美羽、大人気タレント家族の娘である恋愛体質の兎草早織、父と2人で復讐代行業を営む戌井小柚。ウサギとカメ、イヌの名前を持つ3人は、有名童話さながらの奇想天外な騙し合いを繰り広げるが……。

(出典元:映画.com)

 

 

ハードルを上げ過ぎた…かも

 

トリプル監督(上田慎一郎監督&中泉裕矢監督&浅沼直也監督)作品とはいえ、『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督の新作なので、どうしても期待は高まるし、『カメ止め』と比較して観てしまうという、ハードル上がりまくりの本作『イソップの思うツボ』。『カメ止め』の例もあるので、僕は前情報はまったく入れずに観てきました。

 

ぶっちゃけ、誰にでもオススメできる面白い映画、ではなかったです。『カメ止め』は誰にでもオススメできるほどに面白かったんですが、そこには至らなかったです。

 

でも、映画としては十分面白かったですよ!及第点!(若干の上から目線。)

 

もうこれはどうしたって『カメ止め』を頭の片隅に置いて観てしまうので、何か仕掛けがあるんじゃないかとか、これは伏線なんじゃないかとか、最初から最後までそういう見方をしてしまうんですよね。上田慎一郎監督が何か仕掛けてくるんじゃないかと勝手に身構えてワクワクしちゃう。

 

前半と後半とではまったく物語が変わるというまさかの展開は上田慎一郎監督らしく、とっても面白かったんです。が、パンチが無かったんですよね。『カメ止め』ほどの衝撃が無いというか、ガツンと来なかったんですよね…。

 

ハードルを上げ過ぎちゃったせいで、面白かったけど、けど…何か物足りなさも残っちゃったかなと。欲しがりすぎたかな…。

 

 

 

映画『イソップの思うツボ』ネタバレ感想

前半は爽やかな学園ドラマ

 

友達のいない内気な女子大生・亀田美羽と人気タレント家族の娘で恋愛に積極的な女子大生・兎草早織が中心の前半の物語。

 

良くも悪くも淡々と学園ドラマが展開されるんです。美羽は授業が終わったらまっすぐ家に帰り仲の良い母親と夕食、の繰り返し。タレントの早織はチヤホヤされながら学生生活を楽しく送っている、みたいな。


ある時、イケメン先生が赴任してくるんですね。早織はイケメン先生に目をつけてグイグイとアクションを起こして、2人はどんどん仲良くなるんです。一方、美羽は先生のことは気になるけど何もアクションできずに、せいぜい先生の姿を目で追ったりスマホでこっそり録画した映像を見たりすることだけしかできない…って感じなんです。(冷静に考えたらちょっとヤバイけど。)


展開は完全に学園恋愛ドラマ。

 

もしかしたら、イケメン先生と早織が先に良い感じになるんだけど、最後の最後に何か奇跡が起きてイケメン先生は美羽を選ぶ…みたいな結末をちょっと想像するわけですよ。

 

イソップだし、ウサギ=兎草早織とカメ=亀田美羽だし。最後にカメの美羽がウサギの早織を逆転する物語なのかなって。

 

上田慎一郎監督って、『カメ止め』のような変化球で笑える作品だけではなくて、実は意外と(と言ったら失礼だけど)ハートウォーミングな作品を撮れる監督さんなんです。

 

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(特に『テイク8』と『Last Wedding Dress』の2本は良かったです。オススメです。)

 

だから、本作はハートウォーミングな作品なのね、そっちのパターンね、とか思いつつ観てたんです。そこにちょこっとファンタジーをねじ込んでくるのかなって思ったり。

 

 

 

学園ドラマから一転して怒涛の展開へ

 

ところがところが、まったりとした学園ドラマが一転、バイオレンスでサスペンスな展開にガラッと変わるんです。

 

早織の母・裕子はイケメン先生と不倫してるし、父・信司は美羽らしき金髪の女性と不倫してるし、復讐代行屋の父娘が車で男を引きずり回してたり、ヤクザが突然出てきたり、早織が誘拐されて身代金を要求されたり…と、怒涛の中盤戦。

 

不倫・ヤクザ・誘拐・身代金と、一気に物語が騒がしくなってくるんです。爽やかな学園ドラマはいったいどこにいっちゃったの!?って感じで。

 

でね、身代金を指定された倉庫に持っていった早織の両親も捕らわれちゃうという。兎草家全員確保。

 

そんな捕らわれた兎草家の前に立っていたのはなんと、美羽とイケメン先生と兎草家のマネージャー…。

 

突然、色んなことが起こりはじめ、登場人物も躍動しはじめ、時間が巻き戻されて展開されたりと、前半のフワッとした学園ドラマとのギャップに若干の混乱を引き起こされて、戸惑いつつもグイグイ引き込まれました。上田マジック発動。

 

 

  

亀田家と兎草家(ネタバレ)

 

ここからは、本作の肝というか、感情移入できる大事な展開なんだけど、ちょっと物申したい?こともあるので、がっつりネタバレしちゃいます。知りたくない方はここをすっ飛ばして読んでくださいね。

 

美羽、イケメン先生、兎草家のマネジャーの3人は…実は家族だったんです(美羽とイケメン先生が兄妹だったのにはマジでビックリ!)。

 

つまり、爽やかな学園ドラマの裏で、亀田家の面々は兎草家を罠に仕掛けてたんですね。美羽は信司と不倫、イケメン先生は裕子と不倫&早織に接近、美羽父はタレント兎草家のマネージャーに。

 

ある事件がきっかけで、亀田家は兎草家を恨んでいたんです。

 

交通事故で大怪我を負った美羽のお母さんが、病院で治療を受ける順番だったんだけど、同じく交通事故で大怪我を負った早織を助けたいがために、早織の両親は医者に賄賂を渡して、早織の治療を強引に優先させたんです。そして、そのせいで治療の遅れた美羽のお母さんは亡くなってしまったんです…。(確かに寓話ではウサギはカメを追い抜くんだけど、この追い抜き方はダメでしょ。)

 

兎草家のせいで美羽のお母さんは亡くなってしまい、亀田家は兎草家に復讐することを誓ったんです。兎草家を罠にハメ、兎草家崩壊を誓ったんです。

 

そりゃあ、亀田家の面々は怒り狂いますよね。想像に難くない。

 

信司と裕子の不倫をバラし、病院での一件を早織にバラし(早織は賄賂のことは知らないからね)、兎草家を崩壊させて亀田家は復讐を見事に果たすことに。めでたしめでたし。

 

 

じゃなーいっ!

ちょっと一言物申したいっ!

言わせて。

 

 

まずは、兎草家への復讐が不倫て。ちょっと優しすぎやしないかい?こっちは母親死んでるねん(こっち=亀田家)。釣り合わないでしょ。目には目を…っいう考えはよくないけど、復讐ってそういうことでしょ?

 

兎草家をバラバラにさせてもねぇ、だったら不倫ネタを週刊誌に持ち込んだ方がダメージ大きかったんじゃね?とか身も蓋もないことを思っちゃうわけですよ。

 

で、次が一番物申したいこと。

 

復讐する相手は、兎草家ではなく、賄賂を受け取って早織を優先して治療した医者じゃないの?ってこと。そりゃ、お金にモノを言わせて早織を優先させた両親はよくないよ。タレントさんならやりかねないのかもしれないけど(思いっきり偏見)。

 

でも、賄賂を受け取った医者がいちばん悪いよね。賄賂を受け取らないで順番通りに美羽のお母さんを治療してたら問題なかったのに。どうしてもここが引っかかっていて。最後に偶然でも何でもいいから、その医者は何かしら絡んで欲しかったですね。(まったく絡まなかったし、そもそも登場すらしなかったという。)

 

その辺が気になってしまって乗り切れなかったのがちょっと残念でした…。

 

 

 

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残念な設定

 

素人の亀田家が、用意周到に兎草家に罠をしかけて、復讐を果たすのには無理があるから、ヤクザが復讐をお膳立てするという流れはわかる。そこまではわかるんだけど、お膳立てする代わりにその復讐劇を悪趣味な富裕層にネット配信することでヤクザ(近藤)たちはお金を稼ごうとする設定が、ちょっと残念でした。復讐劇に深みを持たせようとしたのか、理由はわからないけど、この設定、いらなくね?

  

もし、この復讐劇を悪趣味な富裕層が観ているという設定にするなら、最後に何かしら亀田家や兎草家と絡んで欲しかったけど…結局ただ変な仮面つけて見てるだけだったからなぁ。

 

学園ドラマから復讐劇への怒涛の展開は良かっただけに、この設定がなぁ…あまりにも安っぽく感じてしまいました。残念。

 

 

  

魅力的なキャスト陣

3人の?ヒロインたち

 

亀田美羽を演じた石川瑠華さん。とっても可愛らしくて良かったです!こういう女の子いるよなぁって思えるほどの内気な女子大生っぷりは見事でした。本編冒頭に、転けてお弁当を床にひっ散らかしちゃうシーンがあるんだけど、もうね、いたたまれなくてね…。

 

良い意味で素朴な普通の子っていう感じなので、復讐時の内から滲み出る怒りの表情なんかはリアリティがあってとっても良かったです。振り幅の大きい役で難しかったと思いますが、上手に演じていたと思います(上から目線)。

 

タレント家族の娘・兎草早織を演じた井桁弘恵さん。すっごく可愛くて、本作最大の収穫でした!前半はイケメン先生に積極的にアプローチする可愛い女子大生、後半は両親の秘密を知ってショックで泣き叫ぶ可哀想な女の子。これまた振り幅の大きい演技で難しかったと思いますが…どっちも可愛かったです(可愛いしか言ってない)。

 

ちなみに井桁弘恵さん。現在、絶賛放送中の『仮面ライダーゼロワン』にレギュラー出演されてます!本作のような可愛い女子大生役とは違って、怪人たちに立ち向かうピリッとしたクールな役で(なんと仮面ライダーに変身するんだぜ!)…可愛いです。テレビ朝日系列で毎週日曜日午前9時から放送されているので観てね。

 

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復讐代行屋の戌井小袖を演じた紅甘(ぐあま)さん。実は本作鑑賞後にパンフレットを読んで「この子もヒロインだったんだ!」って知ったという。復讐代行屋父娘の娘として物騒な生活しているけど、実は留学したいという夢を持っているという、気が強くて腕っ節の強い女の子なんだけど…設定は良いし、紅甘さんは可愛いしで、膨らませられる要素はたっぷりなんだけど、出番が少ない!これに尽きる!

 

この程度の出番で石川瑠華さんと井桁弘恵さんと同等に扱うの無理があるかな。紅甘さんが可哀想。キャラクター設定が良かっただけにちょっと残念でした。

 

 

濃すぎる早織の父・信司

 

ぶっちゃけ誰よりも印象的だったのは早織の父・信司を演じた桐生コウジさん。これは褒め言葉で言うんだけど、どこか胡散臭いんですよね。ちょっと東南アジアが入っているようなビジュアルがたまらんのですよ。一度見たら忘れない顔って感じで。本作後半の復讐劇編では、裏主役と言ってもいいくらいに目立っていました。

 

スクリーンに映し出されるたびにフィリピンの英雄、マニー・パッキャオ(プロボクサー)を想像しちゃってね。それが僕にはノイズになってしまったんだけど、異様な存在感を放っていて良かったです。

 

テレビではタレント家族の良きお父さん、裏では復讐代行屋と繋がってたり、不倫してたりと…めっちゃ怪しいんです。で、このビジュアル。完璧。

 

 

 

まとめ

 

 

残念ながら「カメ止め』ほどの斬新さ、面白さはありませんでした。が、前半の学園ドラマから後半の復讐劇への怒涛の展開はワクワクしてとっても面白かったです。作品の情報をまったく入れずに観たのも大正解で、先を読めずに楽しく観られました。

 

イケメン先生はホントにイケメンなのか微妙だったり、美羽がお母さんと会話や食事をしていたシーンは実は美羽の妄想だったことがわかった時はホラーでちょっと怖かったり、ラストに大どんでん返しがあるんじゃないかと期待していたけど何も無くて残念だったり…色々と気になることもあったけど、十分に楽しめました。

 

どうしても『カメ止め』と比較しちゃうので、評価は厳しめになってしまって『イソップの思うツボ』単体での正当な評価は難しいかもしれないですね。トリプル監督だからだと思うけど、上田慎一郎監督らしさが出し切れてない感じがしました。

 

上田慎一郎監督の真価は次作に持ち越しって感じですね。2019年10月18日公開の『スペシャル アクターズ』を期待して待とうじゃないか!

 

 

 

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

ではまた。