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映画『ジョーカー』【ネタバレ感想】ホアキン・フェニックス怪演!バットマンの宿敵・ジョーカー前日譚!

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映画『ジョーカー』を観てきました!

 

第76回ベネチア国際映画祭(2019年)金獅子賞受賞!

最凶ヴィラン誕生の物語なんだけど、賞を獲るとは…すっごいですねー。

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2019年10月4日

監督:トッド・フィリップス

製作:トッド・フィリップス

   ブラッドリー・クーパー

   エマ・ティリンガー・コスコフ

製作総指揮:マイケル・E・ウスラン

      ウォルター・ハマダ

      アーロン・L・ギルバート

      ジョセフ・ガーナー

      リチャード・バラッタ

      ブルース・バーマン

脚本:トッド・フィリップス

   スコット・シルバー

音楽:ヒドゥル・グドナドッティル

制作国:アメリカ

上映時間:122分

配給:ワーナー・ブラザース映画

 

 

キャスト

ホアキン・フェニックス:アーサー・フレック/ジョーカー

ロバート・デ・ニーロ:マレー・フランクリン

ザジー・ビーツ:ソフィー・デュモンド

フランセス・コンロイ:ペニー・フレック

ビル・キャンプ:ギャリティ刑事

シェー・ウィガム:バーク刑事

ブレッド・カレン:トーマス・ウェイン

グレン・フレシュラー:ランダル

リー・ギル:ゲイリー

ダグラス・ホッジ:アルフレッド・ペニーワース

ダンテ・ペレイラ=オルソン:ブルース・ウェイン

マーク・マロン

ジョシュ・パイス

シャロン・ワシントン

ブライアン・タイリー・ヘンリー

 

 

予告


映画『ジョーカー』特報【HD】2019年10月4日(金)公開

 

  

あらすじ

「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸に、大都会で大道芸人として生きるアーサー。しかし、コメディアンとして世界に笑顔を届けようとしていたはずのひとりの男は、やがて狂気あふれる悪へと変貌していく。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『ジョーカー』ネタバレ感想

ジョーカー前日譚

 

心優しき男がなぜ最凶ヴィラン・ジョーカーになってしまったのか。ジョーカー前日譚を描いた本作『JOKER ジョーカー』。

 

ジョーカーが誕生するまでの過程がストレートでわかりやすかったし、あまりにも今の社会とリンクしていて、リアリティーがあって、思いっきり感情移入できるのが良かったです。

 

名作、傑作、衝撃作、問題作…うーん、どれにも当てはまるような当てはまらないような。かなりヘビーで色々考えさせられたけど、ジョーカー前日譚を描いた「物語」としては抜群に面白かったです。

 

 

 

ジョーカー誕生

 

主人公アーサーの境遇、社会的孤立、貧困、裏切り…諸々がホントに痛々しくて、観ていて辛くて。

 

アーサーは精神疾患を患っているんですね。カウンセリングを受けていて、薬も処方されていて。で、その精神疾患の要因は色々あると思うんだけど、最大の要因は「笑ってしまう」ことだと僕は思っていて。

 

幼少期に受けた脳の損傷の影響で、アーサーは緊張すると「笑ってしまう」という症状が出ちゃうんです(それもかなりの大爆笑)。要は脳障害。自分の意思とは関係なく笑ってしまうんです。

 

すると、どうなるかというと、周りの人間からは白い目で見られちゃう。なんだこいつは、と。そりゃそうでしょうよ、突然笑い出すんだから。白い目で見られるだけならまだしも、心無い言葉を浴びせる輩もいるばすで。そうなると精神をやられていくのは当然で。

 

精神をやられちゃっても、心優しきアーサーにはコメディアンになるという夢があるし、精神を病んでいる母親を養わないといけないし、大道芸人として健気に頑張って働くんです。

 

が、アーサーは普通に頑張っているのに、市の意向で一方的にカウンセリング施設は閉鎖されちゃうし(薬も貰えないし)、アーサーもやらかしちゃって仕事はクビになっちゃうし、いよいよ社会から孤立していくんですね。

 

精神を病んでいる、職はない、母親と二人暮らし、周りに助けてくれる人もいない…って、実際にあり得そうな状況だし、あまりにもリアリティーがあり過ぎて、観てるこっちもめっちゃ沈んでいくんです…。アーサーはこれからいったいどうなってしまうんだと。光の見えないアーサーに、思いっきり感情移入しちゃうんです。

 

で、エリート会社員に拳銃をぶっ放し、いよいよアーサーの人生が詰みかかっている時に、恐ろしい事実が発覚しちゃうんです。

 

アーサーの母親は本当の母親じゃなかったんです(アーサーは養子ってこと)。アーサーの心の拠り所だった母親は実は他人だったことがわかるんです。さらに、当時母親が付き合っていた男の虐待によって、アーサーは脳に損傷を受けたこともわかるんです。(もうね、可哀想すぎて観てるのが辛い!)

 

「笑ってしまう」脳障害や精神疾患があったり、周りからは気持ち悪がられたり、仕事をクビになったりと、辛くてキツい人生を歩んで来たのに、人としての道を外れなかったのは、母親がいたからこそだと思うんですね。(ややマザコン気味に見えたし…。)

 

その壊れてしまいそうなアーサーのストッパーとなっていた母親に裏切られたことによって、アーサーの中のリミッターが外れて、アーサーの中にくすぶっていた鬱屈とした気持ちが吹き出しちゃうんです。

 

そして、アーサーは母親を殺すという最悪な行動に出ちゃうんです…。(最悪なシーンなんだけど、個人的にはアーサーには笑いながらやって欲しかったなって思う僕は最低な奴かな…?)

 

もうね、観ていてホントに痛々しくてキツいの。だって「どんな時でも笑顔で人々を楽しませなさい」っていう母親の言葉を胸にコメディアンを目指して、それを生き甲斐として頑張ってきたのに。その言葉があったから人として生きてこられたのに。生きる道を示してくれて、いちばん信頼していた人間に裏切られちゃうんだから。

 

でもね、裏切られたとはいえ、もしアーサーに精神疾患がなかったら…もしアーサーに友人がいたら…もし生活に余裕があったら…殺すことはなかったのかなぁなんて思ったり。

 

僕的には、母親を殺した瞬間に「ジョーカー」は誕生のしたのかなぁなんて思います

 

 

 

悲しい逆恨み

 

アーサーの同僚ランダルが、トラブルに巻き込まれたアーサーに、自分の身は自分で守れと拳銃を渡すんですね。この行為が結果的に凶と出て、ジョーカー誕生のきっかけになっちゃうんです。

 

アーサーが小児病棟にピエロとして慰問していたんだけど、その時に拳銃を落としちゃって、仕事をクビになっちゃうんです。これはどう考えても病棟に拳銃を持ち込んだアーサーが悪いと思うんだけど、アーサーは拳銃を渡したランダルにハメられたんだと逆恨みしちゃうんです。(この時点で精神がかなりやられていたことが想像できる。)

 

実際のところ、ランダルがアーサーをハメたのかどうかはわからないんだけど、ランダルの態度を見る限り、僕は本当に善意でアーサーに拳銃を渡したんだと思うんですね。アーサーは孤立していたけど、彼を助けようとする人間が実はいたんだと思うんです(ランダル以外にも)。でも、精神疾患のせいなのか、ただ単に精神的に追い込まれてしまっていたからなのか、自分にとって良くないことが起きると周りのせいにしちゃう。

 

あくまでも僕の想像だけど、ランダルってアーサーの優しさを知っている数少ない人間のひとりだったような気がするんです。拳銃を渡すことが良かったのかどうかは微妙だけど、手を差し伸べたことは確かで。その彼を逆恨みしちゃって手を掛けてしまうアーサーの悲しさ。闇の深さが浮き彫りになったシーンで、観てる方はちょっと辛かったです…。

 

 

 

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カリスマ誕生と暴動と

 

心優しき男・アーサーが闇に堕ちていく様を痛々しくも淡々と描かれていたので、ジョーカーが貧困層のカリスマになるという展開、そして、貧困にあえぐ人たちがみなピエロの面を被って暴動を起こすというクライマックスはドラマチックでとっても面白かったです。

 

と同時に、滑稽にも見えちゃって。だって、エリート会社員を衝動的に撃ち殺した結果、ピエロのペイントをした男(アーサー)を英雄視した貧困層の人たちがみな同じピエロの面を被って暴動を起こすという浅はかさ。これは滑稽でしょ。

 

でね、この暴動のシーンが、今まさに起こっている香港のデモに酷似していて、物凄くリアリティーがあるんです。暴動の理由は全然違うんだけど、香港の暴動では皆黒いマスクをしているけど、本作の貧困層の人たちの暴動では皆ピエロのマスクをしていて。さらに警察官が市民に発泡するシーンもあったり…ホント酷似し過ぎて怖いくらい。

 

暴動の理由は違えど、根っこのところは同じような気がするんですよね。香港の人たちもゴッサム・シティの貧困層の人たちも不安や不満を国や市に持って生活をしていて。鬱屈とした気持ちを押さえ込んで生活してきたんだと思うんだけど、ちょっとしたきっかけでそれが爆発しちゃう。

 

暴力的解決は良くないとは思うんだけど、成熟していない社会、混沌とした社会では起こり得ちゃう。ジョーカーのような人間が現れても、日本で暴動は起こり得ないとは思うけど、扇動されて国としてはまずい方向に進んでしまう可能性は否定出来ないなぁ…なんてちょっとマジメに思わされたシーンでした。

 

あ、そうそう、警察に追われるジョーカーが、ピエロの面を被っている人たちに紛れて逃げ切るっていうアイデアはとっても良かったです。(銀行強盗犯が人質に紛れて逃げるという、タイトルは忘れたけどそんな映画を思い出しましたよ。)

 

 

 

ホアキン・フェニックスの怪演

 

作品も面白くて良かったんだけど、何がいちばん良かったのかと言えば、やっぱりホアキン・フェニックスの演技でしょ。作品自体の評価は、内容が内容なだけに割れる気はするけど、ホアキンの演技はみな高評価なんじゃないかな。

 

脳障害で「笑ってしまう」演技なんてホント最高でした。心の底から笑っているように見えるし、笑うのを我慢しようとしているけど我慢できずに笑っちゃうようにも見えるし、悲しげにも見えるし、投げやりにも見えるし…複雑な感情が込められてるように見えるんです。僕にはとっても悲しく見えました。

 

あとは、体型ですよね。貧困で満足に食べられていなかったからなのか、精神疾患の薬の影響で食欲が無くなっていたのか、はっきりと理由はわからないけど、病的にやせ細っていて骨ばった感じで。観てるこっちが心配になるほどで、ホアキンの役への情熱を感じられて良かったです。

 

ジョーカーが所々で見せるダンスシーンも不気味で美しくて良かったんだけど、印象的だったのは走り方。なんて言うのかな、ガチャガチャした走り方がダサくて。しっかりご飯を食べてないのか力強さがなくて、ただ必死に走っている感が表れていて、とっても印象的で良かったです。芸が細かい!

 

オスカー…獲ったりして!?

言い過ぎ?

 

 

 

まとめ 

 

言い方に語弊があるかもしれないけど、最凶ヴィラン・ジョーカー誕生までの物語を、よくもまぁ約120分間もたせたなぁと感心しちゃいました。(これはめっちゃ良い意味で、です。)

 

心優しき男・アーサーが精神疾患やら社会的孤立やら貧困やら裏切りやら…色んなことが重なって闇に堕ち、ある意味、人としては1度死ぬんだけど、最凶ヴィラン・ジョーカーとして生き返るという、「アメコミなめんなよ」ってな感じでなんとも凄い人間ドラマで…ホント面白かったです。(観終わった後は若干気分が落ちるけど。)

 

ジョーカー誕生までの展開がストレートでわかりやすくて、とっても感情移入できるし、こんなにキツい人生なら、ジョーカーのような悪に堕ちていく気持ちも何となくわかるなぁって。

 

精神疾患や貧困に苦しむ弱者を救済できない社会のせいでもあるし、アーサーがジョーカーへと墜ちるきっかけとなった銃を簡単に手に入れることができる銃社会のせいでもあるし…アーサーにはめちゃくちゃ同情してしまう。

 

でもね、思いっきり同情は出来るけど、どうしても共感はできないです。ここはハッキリと言っておきたいですね。アーサーには同情すべき点は多々あるし、お先真っ暗だけど…人を殺しまくることに対しては、やっぱりそれはダメでしょって僕は思う。どんな境遇でも一線を越えてはダメだと思うんです。

 

アーサーと同じとまでは言わないけど、近い境遇の人っていると思うんですよね。精神疾患や社会的孤立や貧困に苦しんでいる人たち。ジョーカーのような凶悪犯罪者になってしまう人も、中にはいるかもしれないけど、真っ当に生きている人の方が多いと思うんです。本作でアーサーに共感しちゃったら凶悪犯罪を認めることになっちゃう。それはあり得ないでしょ。

 

同情するけど共感はできない

 

ここは、僕の気持ちとしては譲れない部分かな。

 

主人公アーサーには同情するけど共感は出来ない、けど作品としては抜群に面白いという、なんだか評価の難しい作品(傑作だけど絶賛はできない作品)でした

 

闇が深い作品なので、気軽にオススメ出来る作品ではないと思うけど、わかりやすくて誰にでも楽しめる…というか、一見の価値あり!っていう作品なので、精神的に落ち着いている時に観に行ってはいかがでしょうか。

 

バットマンを観たことが無い方でも十分楽しめるのも良かったです。でも、幼い頃のブルース・ウェインが登場するので、バットマンを観ておいた方がより楽しめると思いますよ。)

 

 

 

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

ではまた。