映画『ミッドサマー』【ネタバレ感想】現実か妄想か?ホラーでコメディーな祝祭映画!
映画『ミッドサマー』を観てきました!(2020年2月21日鑑賞)
いったい僕は何を見せられていたのか…。
理解不能に陥ったので、40歳を過ぎた映画好きおじさんの感想を垂れ流すことにしました。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2020年2月21日
監督:アリ・アスター
脚本:アリ・アスター
音楽:ボビー・クルリック
制作国:アメリカ
上映時間:147分
配給:ファントム・フィルム
キャスト
フローレンス・ピュー:ダニー
ジャック・レイナー:クリスチャン
ウィリアム・ジャクソン・ハーパー:ジョシュ
ウィル・ポールター:マーク
ウィルヘルム・ブロングレン:ペレ
アーチー・マデクウィ:サイモン
エローラ・トルキア:コニー
ビョルン・アンドレセン:ダン
予告
あらすじ
不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。
(出典元:映画.com)
映画『ミッドサマー』ネタバレ感想
思ってたのと違う!作品でした
僕はスプラッター映画のような、エグい描写の多い作品を好んで観たいとは思わないけど嫌いではないむしろちょっと好き、というめんどくさい奴でしてね。顔を手で覆いつつも気になるから指の隙間から観ちゃう、みたいな。嫌よ嫌よも好きのうち、みたいな(違う)。
でね、本作の<フェスティバル・スリラー>という何ともファニーな謳い文句から想像するに、祭りの如く明るく賑やかにバッタバッタと人々が殺されていく狂気の世界を描いた派手な作品だと思い、観たくないけど観たいというめんどくさい僕の欲求を満たしてくれる作品だと思い、公開初日(の最終上映)に意気揚々と観に行ったんだけど…思っていたのと違う作品でした(^^;;
(公開初日に観に行ったのにパンフレットが売り切れで買えなかったという悲劇に見舞われたという、どうでもいい事も付け加えておきます。)
不穏で不気味な物語
スウェーデンのある村(ホルガ村)の祝祭に参加した大学生たちが<儀式>に巻き込まれるんだけど、全編ずーっと不穏で不気味で。村人たちは皆白い衣装を纏っていて愛想も良くて感じが良いんだけど、それが妙にカルト教団っぽくてじんわりと怖いのよ。笑顔の裏に何かあるんじゃ無いか、みたいな(実際あるんだけど)。
全編に渡って不穏で不気味な空気が満ち満ちてはいるんだけど、あるワンシーン(トラウマ級のスプラッターシーン!)を除いては、思いのほかメリハリの無い展開が終盤まで続くんです。
でもね、このメリハリの無い演出が素晴らしいのよ。メリハリは無いんだけど、村人たちが皆揃って食事したり、女性だけ謎なドリンクを飲んだり、突然ダンスバトルが始まったり…ちょっとずつ変なんです(そしてちょっとずつ笑える)。そのちょっとずつ変な感じが積み重なって、何か恐ろしいことが起きるであろうと観客に不安を煽りながらうまく作品に没入させる演出は抜群でした。
で、そのメリハリの無さが本作の良くなかった点でもあってね…。とにかくテンポが悪い、そして長い(笑)。冗長的と言うんですかね。もう少しテンポよく要所要所で盛り上がりを見せてくれても良かったんじゃないのかな、とか思ったり。そのメリハリが無さ=淡々さがより恐怖を煽っていた理由のひとつだとは思うけど、中だるみ感を感じざるを得なかったです。(もっとスプラッターしても良かったんじゃないかなと、個人的には思ったり。)
ダニーの妄想=バッドトリップの物語?
主人公ダニーのことで気になることがありましてね。
冒頭でダニーは家族を不慮の事故で亡くしてしまうんです。家族の死が後々の展開に大きく関わってくるのかと思っていたんだけど(例えば、実は両親がホルガ村の出身であったり、とか)全く関わってこないのよ。なぜ家族の死を描く必要があったのか不思議に思っていて。
でね、元々ダニーは精神を病んでいるような描写があったので、さらにダニーの病んでいる具合を悪化させる必要性があったから、わざわざ家族の死を描いたんだと僕は思ったわけで。
ここからが僕の妄想。
ダニーはそんな最悪な精神状態で彼氏のクリスチャンや友人たちとホルガ村に行き(僕だったら行く気にはなれないけど)、早々に薬をやったわけですよ。本人も精神状態が悪いことを自覚して、はじめは拒否ったんだけど、結局周りに気を使い薬をやってしまったと(周りに気を使って合わせてしまうのもダニーらしい)。そしてダニーは気持ち良くなって寝てしまい妄想に駆られる…という展開だったんだけど、実はこのシーン以降はダニーの妄想だったんじゃないかと。薬によってバッドトリップしてしまったんじゃないかと。
家族の死というかなり重い描写が何も意味を持たないとは考えられなくて。僕は夢落ちならぬトリップ落ちの可能性があると思っているんだけど、どう思います?(突然の質問)
つまりホルガ村に到着して薬をやってからはダニーの妄想の物語だったと…あのスプラッターシーンも怒涛のラストシーンも。
トラウマ級のスプラッターシーン(注意喚起)
注意喚起のために書いておきます。
クリスチャンと村の女性のまぐわいのシーンやダニーが参加したダンスバトルは謎過ぎて面白くて良かったんだけど(僕はこの2つのシーンはコメディーだと思っている)、いちばん触れておきたいのは本作の唯一のスプラッターシーン。生を全うした男女がある儀式を行うんだけど、それはそれは強烈なワンシーン。これも宗教的な(輪廻転生的な)思想が絡んではいるんだけど、そんな事はどうでもいいの。狂気の沙汰っていうやつです。
多分このシーンは「さぁ、今からフェスティバル・スリラーの開幕です!どうぞご覧ください!」的な単なる号砲だったんじゃないかなと思っていて。このシーンに深い意味があるとはとても思えなくて。(この村はヤベェぞ!と思わせるという意味ではかなり意味のあるシーンだけど…。)
ちなみにそのシーンを観て、僕の隣に座っていた女性は「ひえぁっ!」っていう普段では聞くことのない軽い悲鳴のような声を上げ、左斜めに座っていた女性は口を押さえ、何人かは退席しました(後々戻ってきたから単にトイレに行った可能性もあるけど、タイミング的にはショッキングで一時退席したと思われる)。
スプラッター映画が苦手な方は、人間が断崖絶壁に立つシーンが流れたら目をつぶって耳を塞ぐことをおすすめします。
ダニーの微笑み(まとめ)
ラストシーンでのダニーの微笑み。精神的に弱っている時にホルガ教団(ホルガ村)の団員たち(村人たち)に共感されたことによってダニーの心が救われたという証明だったように思えるし、まさに宗教的な要素が絡んだ本作らしい結末だと思いました。宗教って魂の救済みたいな側面があるじゃない。
バッドエンドに見えて、実はハッピーエンドな終わり方だったんだと思います(かなり歪んでますが)。
ホラーにも感じられるしコメディーにも感じられるし、あまりにも不思議な世界観を持った作品。面白かったとか面白くなかったとかではなくて、いったい僕は何を観せられていたんだろう…というのが正直な感想。謎が多過ぎるので、観れば観るほど味が出てくるような作品だと思います。
万人にはオススメは出来ないけど、ちょっと変わった映画を観たい方には是非ともオススメしたい。皆で語り合うにはうってつけの映画だと思いますよ。
(精神的に参っている方や体調が優れない方は、心と体を整えてから鑑賞することをオススメします。)
おしまい。