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映画『パラサイト 半地下の家族』【ネタバレ感想】ソン・ガンホ主演。格差社会の悲劇を描いたブラックユーモアたっぷりの傑作!でも結末は好みではない…。

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映画『パラサイト  半地下の家族』を観てきました!

 

カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品

アカデミー賞作品賞ノミネート作品

 

期待通りの作品でした!が…

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2019年12月27日

監督:ポン・ジュノ

製作:クァク・シネ

   ムン・ヤングォン

   チャン・ヨンファン

脚本:ポン・ジュノ

   ハン・ジヌォン

制作国:韓国

上映時間:132分

配給:ビターズ・エンド

 

 

キャスト

ソン・ガンホ:キム・ギテク

イ・ソンギュン:パク・ドンイク

チョ・ヨジョン:パク・ヨンギョ

チェ・ウシク:キム・ギウ

パク・ソダム:キム・ギジョン

イ・ジョンウン:ムングァン

チャン・ヘジン:キム・チュンスク

チョン・ジソ:パク・ダヘ

チョン・ヒョンジュン:パク・ダソン

パク・ソジュン:ミニョク

 

 

予告


第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編

 

  

あらすじ

キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『パラサイト  半地下の家族』ネタバレ感想

傑作だと思うけどぉ…

 

第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞した作品。ネットの声も軒並み高評価で、思いっきり期待して劇場に足を運んできた次第です。

 

すっごく面白かった!さすがパルムドール受賞作!傑作!間違いない!…けどぉ、という奥歯に物が挟まったような感想を抱いてしまったワタクシ。

 

間違いなく傑作だとは思うんだけど、結末が好みではなかった。そんな感じ。

 

 

 

ブラックユーモア

 

貧困家族(家族全員無職)キム家の長男ギウがひょんなことから裕福家族パク家に家庭教師として<パラサイト>。次に妹ギジョンも同じく家庭教師として<パラサイト>。まさかとは思ったけど、今度は父親ギテクが運転手として<パラサイト>。締めは母親チュンスクが家政婦として<パラサイト>。一家丸ごと<パラサイト>する前半のコメディーな展開はとってもリズムが良くて、グイグイ物語に引き込まれて(^o^)トッテモオモシロイ!

 

全員就職できてハッピーだわぁ…なんてキム家の面々が思っていたら、すでにパク家に<パラサイト>していた人間が地下にいたという斬新すぎる展開がホラーで(>_<)チョットコワイ!。そして物語は予期せぬ方向へ向かい…そして悲劇が…!

 

はじめは軽い気持ちでパク家に<パラサイト>したキム一家。しかし、想定外の事が起きて、雪だるま式にどんどん悪い方向へと向かってしまうというコーエン兄弟監督作品『ファーゴ』(←オススメ!)を連想させるブラックでユーモアのある展開がホントに面白くてスクリーンに釘付け。

 

 

 

主人公キム・ギテクの闇

 

楽天的で温厚そうに見えたギテクの裏側に隠されていた鬱屈とした気持ちや富裕層に対する劣等感が爆発して凶行に及んでしまう展開はホントに衝撃的でね。本作のリーフレットのデザインを見ても、何かしら良からぬことが起きることは予想できたけど…覚悟はできていたけど、衝撃的。

 

誰しも多かれ少なかれ心に闇を抱えていると思うんです。でも、それを表に出さないで、気持ちに蓋をして生活しているわけで(もちろん僕もそう)。

 

貧しいけど楽天的で温厚そうなギテクも、実は溢れんばかりの闇を抱えていたと僕は思う。そうじゃないと、こんな悲劇的な結末にはならないもの。ギテク自身は心の闇を自覚していたかどうかはわからないけど。裕福なパク家に就職したことによってお金が入ってきて、気持ちは少し晴れたかに思えたけど実はそんなことは無かったんじゃないかな。もしかしたら裕福な家庭を目の当たりにしたことでさらに劣等感を強めたのかもしれない。体に染み付いた半地下の臭いと一緒で、心に染み付いた闇はそう簡単に落とせない。

 

そして、偶然聞いてしまったパク夫婦の会話「(ギテクは)臭う」という言葉がトリガーとなってギテクの闇が溢れ出ちゃう(シーン的には面白いシーンなんだけど)。ギテクが健全な気持ちなら笑って済ますことが出来る言葉かもしれない。でも、良くあるじゃない。何でそんな事で怒るの?みたいなこと。それと一緒。ギテクの劣等感はもうパンパンでギリギリだったから、何気ない一言で闇が溢れ出したんだと思う。ギテクの中にある劣等感がMAXを超えたんだと思う。

 

ギテクの心の闇が溢れ出したのは大雨の日で。ギテクの半地下の家がほぼ水没しちゃうんだけど、ギテクの心の闇が溢れ出したことと大洪水のシーンがリンクしていて描き方がうまい!って感心しちゃったりもして。

 

半地下の家が水没しちゃってもう大変!っていうのにパク家長男ダソンの誕生日パーティーにお呼ばれしちゃう。いやいやいや、それどころじゃないんですよ奥様、って言いたいところだけど行くしかないじゃない。<パラサイト>しているご主人様のご要望なんだから…。で、このことがギテクの中のリトルギテクが爆発する決定打になったんじゃないかな。俺のことを臭うって言った上に、俺たち貧乏人は大雨で大変な思いをしてるのにお前ら金持ちはノーテンキに息子の誕生日会ですと!?みたいな。この野郎、馬鹿にしやがって、みたいな。

 

ここでギテクは格差を改めて認識したんだと思う。自覚したんだと思う。お金持ちは貧乏人の事なんて気にしてない上流にいる人間は下流にいる人間の事なんて気にしてない、と。

 

パク一家に悪気はないの。貧しい人たちを気にしてないわけじゃない。目に入ってないだけ(それも酷いわ!)。でもね、案外世の中そんなものじゃね?とか思ったりもする。自分の事しか考えてない人間って山ほどいるし。僕も自分の胸に手を当ててみると…思い当たる節が無くはない。

 

 

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僕の好みではない結末

 

本作が格差社会の闇をユーモアを交えて悲劇的に、そしてエンターテイメントに仕上げた傑作であるのは間違い無くて。マチガイナイ!(o^^o)

 

でも僕がどうしてもモヤるのは、理不尽だということ。ギテクにとってはある意味、感謝こそすれ襲う理由など無いはず。はっきり言ってパク一家は何も悪いことはしていない。これは完全に逆恨みってやつ。

 

ポン・ジュノ監督は、金持ちは貧乏人のことなんて気にしてないし目に入ってない、という現実を浮き彫りにさせたかったのかもしれない。けど、それはみんなそうでしょ。金持ちに限らず。みんな必死に生きているから、なかなか周りを気にする余裕なんてないじゃない。君には見えてるかい?(って誰に聞いてる?)

 

確かに世の中は理不尽だらけ。人を轢き殺しても上級国民とか意味のわからない理由で逮捕されないとか。世の中理不尽で成り立ってる(言い過ぎ?)。お金持ちだろうと貧乏人だろうと清く正しく美しく生きていたって理不尽にも殺されてしまうことはある。だから本作の結末は今の世の中らしいといえばそうかもしれない。

 

でもさ、理不尽を理不尽のまま描いても寂しくない?格差社会を描いてやっぱり格差社会は悲劇を生むんだな、で、終わったら悲しくない?

 

せっかくユーモアに溢れ、脚本も良くて、キャラクターも魅力的で、伏線もしっかり張られ、とっても素晴らしい作品なんだから、最後は少し希望を持たせて欲しかった。この世の中に希望なんかあるかい!ってことで希望を持たせない結末を監督が描きたかったのなら、せめて罪を犯した人間をビシッと裁いて欲しかった

 

貧困だからやってしまった、金持ちが妬ましくてやってしまった、といった要因に対する結末にちょっと納得がいかない。傑作だとは思うけどモヤる。だから…絶賛はできないんだよなぁ…。

 

昨年劇場公開された『ジョーカー』と似た感覚。作品としては抜群に面白かったけどモヤる。同情はできるけど共感はできないってやつ。

 

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本作『パラサイト 半地下の家族』と『ジョーカー』は2020年第92回アカデミー賞作品賞にノミネートされている。さあ、どうなるのか。どう評価されるのか。これは非常に興味深い。

 

個人的には『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に獲って欲しいと思っております。実際に起きた悲劇をタランティーノ監督がうまく脚色してさ。何だか、希望のあるお話だったじゃない。

 

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半地下の家族(最後に)

 

『パラサイト 半地下の家族』。

 

半地下の家族、キム一家。もしかしたら彼らはまだ地上に上がれる=貧困から脱出できる可能性を示唆していたのかもしれないですね(逆に地下へ落ちる可能性もあるけど…)。今は貧しくても希望はあるんだと、まだチャンスがあるんだと。だから地上でも地下でもない半地下だったのかもしれないですね(設定としてね)。確かにパク家に<パラサイト>した団結力やスキルは目を見張るものがあったし(笑)、違うことにその力を使えば半地下から脱出できたかもしれないなぁ、なんて。

 

結局は地下へ落ちてしまって希望のない結末だったけど…。

 

繰り返すようだけど、そう考えるとやはり最後は希望を持たせて終わって欲しかったな…。

 

だって、元々は誰も悪くないんだもの

 

 

 

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

ではまた。