映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』【ネタバレ感想】設定を活かしきれてないちょっと残念な密室ミステリー。
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』を観てきました!
本作は世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの4作目「インフェルノ」の出版の際に、違法流出防止のため各国の翻訳家たちを秘密の地下室に隔離して翻訳作業を行ったという実話を元に描かれたミステリー、ということ。
ミステリーは大好きなんだけど、今回はネガティブな感想になってしまいまして。本作をとっても楽しく観られた方にとっては気持ち良くない文章かもしれないのでご容赦を…。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2020年1月24日
監督:レジス・ロワンサル
脚本:レジス・ロワンサル
ダニエル・プレスリー
ロマン・コンパン
音楽:三宅純
制作国:フランス・ベルギー合作
上映時間:105分
配給:ギャガ
キャスト
ランベール・ウィルソン:エリック・アングストローム
オルガ・キュリレンコ:カテリーナ・アニシノバ
リッカルド・スカマルチョ:ダリオ・ファレッリ
シセ・バベット・クヌッセン:エレーヌ・トゥクセン
エドゥアルド・ノリエガ:ハビエル・カサル
アレックス・ロウザー:アレックス・グッドマン
アンナ・マリア・シュトルム:イングリッド・コルベル
フレデリック・チョウ:チェン・ヤオ
マリア・レイチ:テルマ・アルヴェス
マリノス・マブロマタキス:コンスタンティノス・ケドリノス
サラ・ジロドー:ローズマリー・ウエクス
パトリック・ボーショー:ジョルジュ・フォンテーヌ
予告
あらすじ
フランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時発売に向けて、9人の翻訳家が集められた。翻訳家たちは外部との接触を一切禁止され、毎日20ページずつ渡される原稿を翻訳していく。しかしある夜、出版社社長のもとに「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。
(出典元:映画.com)
映画『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』ネタバレ感想
設定が活かされてない
実話がベースの密室ミステリー。
設定は面白そうだし、ネットの評価も高いし、こりゃあ観るしかねぇ!と、思いっきり期待して観に行ったわけなんですが…見事に裏切られました(>_<)
だってね…せっかくの設定が活かされてないんだもの…。
9人の翻訳家たち全員が原稿流出事件の容疑者なわけですよ。もっと言うと出版社社長のアングストロームや助手のローズマリーを入れると容疑者は11人。さらに言うと不正に目を光らせる堅気に見えない警備員たちを入れたら、容疑者は全員で13、4人くらいになるわけで。(すっげぇ大人数!)
犯人が誰なのか、伏線を散りばめて僕たち観客をミスリードさせるには十分過ぎるほどの容疑者の数なのに…残念ながらその設定=多過ぎる容疑者たちを活かせてないのよ。
昨年話題になったテレビドラマ『あなたの番です』のように、登場人物全員を怪しげに描く必要は無いんだけど、9人以上の容疑者がいるわけだから、もう少し観る人を振り回すような演出があっても良かったんじゃないのかと、個人的には思うわけです。
なので、物語中盤で早々と犯人を明かしてしまう本作の展開には乗れませんでした(意外性はあったものの効果的では無かったような…)。容疑者の多さを考えると、二転三転四転くらいして最後の最後に真犯人をドーン!と明かす展開の方が盛り上がったんじゃないのかと、個人的には思うわけです。
トリックも残念
犯人が明かされたとなったら次はトリックですよ。密室で軟禁状態なのに、スマホなどのデバイスも没収されてるのに、どうやって原稿を流出させたのか、どうやって出版社に脅迫メールを送ったのか。外部と接触できる可能性がゼロに近い状況下でいかに犯行に及んだのか。そのトリック、非常に興味深いじゃない。
そのトリックも…ダメでした(´Д` )
だってさ、密室とは全く関係のないトリックなんだもの。密室ミステリーなんだから、いかに密室を突破して犯行に及んだのか、そういうトリックであるべきでしょ?密室とは関係のないトリックって…そんなのあり?
で、さらに言うと、原稿流出の容疑者たちが全員翻訳家という特殊な設定であるのに、その翻訳家という設定も全く活かせてないの。翻訳家たちが中心のミステリーなんだから、翻訳家ならではの伏線やらトリックやらが描かれるのかと思いきや全くそんなことは無く…。せめて翻訳家あるあるみたいな描写があれば、少しは溜飲が下がったんだけど全くそんな描写は無く…。翻訳家じゃなくても良くね?って気持ちにどうしてもなってしまってね。
密室を突破する面白いトリックでもないし翻訳家だからこそのトリックでもない。いったい僕は何を観せられていたのだろうか…。
オチも残念
誰が犯人なのかは物語中盤で明かされて、最後にその犯人の本当の正体が明かされるというオチがあってね。オチだけを見れば『ユージュアル・サスペクツ』的で、衝撃的ではあるんだけど、本作にとっては残念なオチでした。(ネタバレ感想とはいえ、オチのネタバレは一応控えておきます。)
犯人がわざわざこんなまどろっこしい方法(地下室で軟禁中に原稿流出→脅迫メールを送る)で事件を起こす必要なくね?って思ってしまう、オチ。
オチによって伏線が回収され、全てが繋がり「なるほど!やられた!」「一本取られたぜ!(←古い)」とはならないのよ。そもそも伏線がないから全然オチが効いてこないのよ。この物語を根本から覆すような残念な、オチ。
いったい僕は何を観せられていたのだろうか…(2度目)。
まとめ
あまりにも「9人の翻訳家の密室ミステリー感」が僕には伝わらなくて、全然乗れませんでした(僕が期待し過ぎていたせいかもしれないけど…)。
ここまで乗れない作品は久しぶりだなぁ…と。犯人が最後までわからない名探偵コナンパターンでもなく、犯人を冒頭で明かしてから展開される古畑任三郎パターンでもない、変化球パターンで意外性はあったけど、僕はダメでした。
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』という作品タイトルと内容がベストマッチではなかった。これに尽きるような気がします。
残念ながら僕は乗れなかったのであまりオススメはしませんが、本作を面白いと感じてる方が多いのも事実。ただ単に僕が本作と合わなかっただけという可能性もあるので、もしかしたら実は面白い密室ミステリー作品…なのかもしれません(微妙な言い方)。興味のある方はぜひ。
おしまい。