映画『コンテイジョン』【ネタバレ感想】新型コロナパンデミックを予見したスティーブン・ソダーバーグ監督に脱帽!
新型コロナパンデミックを予見したかのようなウイルスパニックムービー。マット・デイモンの不憫さに泣け、ケイト・ウィンスレットの罹患に愕然とし、ジュード・ロウの悪びれない態度にムカつく。最後の最後まで面白かったです。
90点。
では、いってみましょう。
作品情報
公開日:2011年11月12日
監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
制作国:アメリカ
上映時間:106分
配給:ワーナー・ブラザース映画
キャスト
マリオン・コティヤール
マット・デイモン
ローレンス・フィッシュバーン
ジュード・ロウ
グウィネス・パルトロウ
ケイト・ウィンスレット
ブライアン・クランストン
ジェニファー・イーリー
エリオット・グールド
チン・ハン
ジョン・ホークス
アナ・ジャコービー=ヘロン
ジョシー・ホー
サナ・レイサン
ディミトリ・マーティン
アルミン・ローデ
エンリコ・コラントーニ
ラリー・クラーク
モニーク・ガブリエラ・カーネン
ダリア・ストロコウス
あらすじ
接触感染により数日で命を落とすという強力な新種ウイルスが香港で発生。感染は瞬く間に世界中に拡大していく。見えないウイルスの脅威に人々はパニックに襲われ、その恐怖の中で生き残るための道を探っていく。
(出典元:映画.com)
映画『コンテイジョン』ネタバレ感想
新型コロナ禍の「今」が描かれている
いやぁ〜、ビックリしました。
スティーブン・ソダーバーグ監督って、予言者なのですかい?
劇場公開されたのは9年前の2011年。なのにコロナ禍の「今」が見事に描かれているという驚くべき内容。
大きく違うところは致死率の高さ(新種ウイルスの致死率は25〜30%と高い)と暴動が起きたことくらい…かな。感染拡大のスピード感、クラスターの発生、感染経路の追跡、パンデミック、隔離、封鎖、デマ、人間の心理、感染への恐怖…などなど、恐ろしいくらいに新型コロナ禍の「今」と酷似するシーンが連発で戦慄。
もうね、あまりにも現実の世界と『コンテイジョン』の世界が重なり過ぎていて、リアリティに溢れ過ぎていて、没入感が半端ないのですよ。登場人物たちにガッツリと感情移入してしまうのですよ。気持ちが痛いほどわかってしまって結構しんどいのですよ。
自分の家族が新型コロナに感染して亡くなってしまうという最悪な事態を一度は想像しませんでした?僕は想像しましたよ。
奥さんと息子を新種ウイルスで失って事実を飲み込めないマット・デイモンの姿なんていたたまれなくてね。見るのがキツかったわ。(ただ、マット・デイモンに関しては後述するけど、もっと酷い仕打ちが待っていたという…。)
感染が拡大する地域に派遣されたCDC(疾病予防管理センター)の研究者ケイト・ウィンスレットが罹患してしまうシーンには愕然としたし、ケイト・ウィンスレットを現地に向かわせた上司のローレンス・フィッシュバーンが罹患の報を聞きショックを受けるシーンには胸が痛んだ。最前線で奮闘している医療に携わる方々が、新型コロナに感染して亡くなることも実際にあったことなので、このシーンもリアルでキツかった…。
デマを拡散して儲けようとするジュード・ロウには1ミリも感情移入しなかったけど、彼の存在も『コンテイジョン』のリアリティにひと役買っていた。ムカつくけど。実際いたじゃない、デマを拡散して世の中を混乱に陥れる奴。
デマ拡散とはちょっと違うかもしれないけど、亡くなった志村けんさん(泣)の動画を勝手にYouTubeにアップして稼ごうとする人間がいたり、岡江久美子さん(泣)の息子を語って稼ごうとするYouTuberがいたり…世の中にはいるんだよね、こういう残念な輩が。金儲けしか考えてない輩が。って書いてたらすっげぇ腹が立ってきたわ。
あ、そうそう。ワクチンが開発されて、接種する順番をどうするのか。このくだりも面白かった。日本ではどうなるんだろう…まずは医療従事者から接種するんだろうけど、僕たち国民はどのような順番で接種するんだろう。年齢順?早い者順?(←これはないか)あるいは抽選?
ワクチンの接種順に関しては未来の話なので、いずれ『コンテイジョン』の内容と答え合せが出来る。日本ではいったいどのようして接種順を決めるのか。非常に興味深いし楽しみ…そして、ちょっと怖い(何も起こらなければいいけど…)。
カメラワークとオチが特に良かった
没入感たっぷりで、僕としてはそれだけで十分満足だったんだけど、その上で良かったところを挙げておきます。
序盤のカメラワーク。
人が触れた物をアップで追い、ウイルスが広がっていく様を表現するというカメラワークは秀逸でした。
なんて言うのかな、触れた物に付着したウイルスが観客に無言の圧力をかけてくるようで、画面から不穏な空気が漂ってくるんです。
『2001年宇宙の旅』に出てくるHALほどの不気味な不穏さ無いものの、映像のブツ撮りって何かを訴えかけるようでインパクトがあるなぁなんて改めて思ったり。
これから始まるパンデミックを予感させるような序盤のウイルスを可視化したようなカメラワークは抜群でした。
感染源が判明するラストのオチ。
感染源は新型コロナウイルスでも有力視されているある動物なんです。この動物を感染源と決めたスティーブン・ソダーバーグ監督の予言者(?)としての恐ろしさを感じましたが、もっと面白かったのは、感染したのは人間の自業自得であるという結末に持っていったアイデア。
詳しいことは書きませんが(自分の目でご確認を!)「感染源はコレでした!」で終わらせずに、最後にしっかりと問題提起をしたところにスティーブン・ソダーバーグ監督のセンスを感じました。(センスとか何を偉そうに言ってるんだオレ。)
マット・デイモンの悲劇と疑問
可哀想だったのがマット・デイモン。新種ウイルスで奥さん(グウィネス・パルトロウ)を亡くし、さらに息子まで亡くしちゃうんです(前述した通り)。これだけでも十分可哀想なんだけど、さらに地獄に叩き落されるんですよ。
なんと奥さん、不倫してた。
えぇーっ!不憫だよ、マット・デイモンが不憫すぎる!
感染経路を追跡した結果、出張中に元彼と会っていたことが判明するという悲劇。不倫を知ってからの感染死ならまだしも、感染死してから不倫を知るって…キツいわぁ〜(´Д` )
で、疑問なのが、なぜスティーブン・ソダーバーグ監督は感染死に不倫という微妙なスパイスを投入したのか。まったくもって意味不明。
この新種ウイルスは不倫によって生み出されたものです!不倫は危険です!今すぐ不倫はやめましょう!っていう物語ならわかるけど、そんな映画は絶対観ないし絶対面白くない。
新種ウイルスに感染→行動を追跡調査される→不倫がバレる、という感染によって引き起こされる二次被害というか、プライバシーの侵害の是非を提起したかったんでしょうかね。
まぁ実際、今回の新型コロナ禍で、不倫とはいかないまでも、感染者がいかがわしい店に関係していることを隠したいから追跡調査に応じない、というケースもあったらしいので、プライバシーの侵害に関しては難しいところがありますよね。
スティーブン・ソダーバーグ監督はなぜ話の大筋に関わってこない不倫という微妙なスパイスを投入したのか、なぜマット・デイモンをここまで地獄に叩き落とす必要があったのか。
なぜ奥さんの死に尊厳を与えなかったのか。
本当の理由を聞きたい。
こんな人にオススメ!
新型コロナ禍を経験した人に観てもらいたい。
ということは、少なくとも日本の全国民に観てもらいたいし、オススメしたい。
自分たちが経験したような新種ウイルスパンデミックが展開されるので、没入感たっぷりでフィクションとして楽しみつつも、一方では新型コロナ禍の経験値があるので、俯瞰して観られたりもするので、今後の第2波(が来るのかどうかわからないけど)に備え、もう一度気を引き締め直すためにも観ることをオススメしたいところ。
2011年の公開当時はどのような反応があったのかわからないけど、他のウイルスパニックムービー同様に他人事として観ていたと思うんです。「怖いな、こんな世界になったら怖いな。でもこんな世界にはならないと思うけどね。」みたいな。
でも実際、こんな世界になっちゃった。
作中のような暴動は起きなかったけど、今後、致死率の高い新種ウイルスが新型コロナウイルスのように蔓延したら(新型コロナウイルスが猛毒タイプに変異する可能性だって十分にある)、日本でも暴動が起きないとも限らない。必要以上に恐れることはないけど、本作『コンテイジョン』を警鐘として捉えても損はないかなとも思う。
繰り返すけど、日本の国民全員にぜひ観て欲しい作品です。
おしまい。
映画『コンテイジョン』をもっと詳しく知りたい方へ
お前の感想じゃよくわからん!と、不満をお待ちの方に朗報。
映画紹介サイト『MIHOシネマ』さんで、映画『コンテイジョン』が詳しく紹介されているので、本作をもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。