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映画『悪人伝』【ネタバレ感想】主演マ・ドンソクの本物感は必見!韓国映画の傑作爆誕!

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ヤクザと刑事が手を組んで連続無差別殺人鬼を追うバイオレンスアクション。ヤクザの組長を演じるマ・ドンソクの本物感は必見。間違いなく傑作。

 

90点。

 

では、いってみましょう。

 

 

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作品情報

公開日:2020年7月17日

監督:イ・ウォンテ

脚本:イ・ウォンテ

制作国:韓国

上映時間:110分

配給:クロックワークス

 

 

キャスト

マ・ドンソク

キム・ムヨル

キム・ソンギュ

ユ・スンモク

チェ・ミンチョル

キム・ユンソン

 

 

あらすじ

凶悪なヤクザの組長チャン・ドンスが、ある夜何者かによってめった刺しにされた。奇跡的に一命をとりとめたドンスは、対立する組織の犯行を疑い、犯人捜しに動き出す。一方、警察サイドで捜査にあたるチョン刑事は暴力的な手段も辞さない荒くれ者として、署内でも問題刑事として知られていた。まだ世間の誰も気づいていない連続無差別殺人鬼がこの事件の犯人であると確信したチョン刑事は、その手がかりを求めてドンスにつきまとう。ドンスとチョン刑事は互いに敵意をむき出しにするが、狡猾な殺人鬼を突き止めるには互いの情報が必要であると悟り、共闘して犯人を追い詰めてゆく。

(出典元:映画.com)

 

 

映画『悪人伝』ネタバレ感想

マ・ドンソクの本物感

 

何が良かったのかって、ヤクザの組長ドンスを演じたマ・ドンソクの本物感が抜群でしてね。

 

もうね、圧倒的に怖そうだし強そうだし…。どの角度から見てもヤクザの組長にしか見えないのよ。笑えるくらいにハマり過ぎ。ヤクザの組長が似合う俳優選手権が開催されたら間違いなく優勝です。

 

殺人鬼に刃物で3、4箇所刺されたって死なないし(普通の人なら1箇所刺されただけで死ぬって)、突っ込んできた車にはねられたって死なない(普通に死ぬって)。あの怖そうなビジュアルとガッチリしたフォルムから漂う不死身感。妙に説得力があるんです。

 

組長ドンス役にマ・ドンソクを据えた時点で、本作『悪人伝』の成功はほぼ約束されたのではないでしょうか、と個人的には思います。

 

 

 

無駄がなくソツのない作品

 

連続無差別殺人鬼を捕まえたい暴力刑事チョン、殺人鬼に瀕死の重傷を負わされた借りを返したい組長ドンス。刑事とヤクザが手を組んで殺人鬼を追う展開はありがちではあるものの、内容が抜群に面白い。抜群に、です。

 

展開のスピード感や緊迫感、バイオレンス描写、殺人鬼の狡猾さ…などなど、とにかくソツがない。無駄なシーンが1秒もなかったです…というのは言い過ぎだとしても、余計な設定や演出が無くて、非常に観やすく没入感が高い。

 

組長ドンスとチョン刑事のわかりやすいキャラクター設定も良かったけど、好感が持てたのは、殺人鬼の設定がシンプルだったこと。実は悲しい過去があった…とか、実は心優しい人間だった…とか、殺人鬼に同情するような設定や演出が無かったので、心置きなく殺人鬼を嫌悪して見られたし、そこにリアリティを感じました。実際、ドラマティックな過去を持った殺人鬼なんて、いないでしょ。

 

殺人鬼にドラマを持たせたらちょっと嘘くさくなっちゃうところを、殺人鬼は単なる頭のおかしい(頭は良さそう)犯罪者として描いたのはとても良かったです。

 

 

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組長ドンスとチョン刑事

 

殺人鬼を追う組長ドンスとチョン刑事の「馴れ合わない」距離感が絶妙でいいんです。

 

一応協力という形ではあるものの、お互いに利用して(利用される)というドライな関係性が清々しいんです。下手に友情が生まれたりすると冷めちゃうところだったけど、最後の最後までヤクザと刑事の関係を保っていたのは好感が持てました。

 

で、ヤクザと警察が協力するって、非常に理にかなっているなと感心しちゃってね。

 

法の下でしか動けない警察より、法律なんかクソくらえでやってるヤクザの方が機動力や情報収集力は上だと思うんです。相手は殺人鬼。裏社会の情報は必須でしょ。まともにやってたら捕まえられないわ。

 

でも、ヤクザが重要な情報や証拠を持っていたとしても、有効活用できるのは、ヤクザよりテクノロジーを所有している警察だと思うんです。DNA鑑定やらの科学捜査はヤクザには無理。

 

ヤグザの機動力と警察のテクノロジーの融合。凶悪犯罪に限ってはありかも、なんて思ったりしました。そりゃあ、反社会的組織と警察が組むなんてあり得ないけど、悪の力を利用して悪を制する正義のヒーロー・仮面ライダー的な発想も重要だよなぁ、なんて思ったり。

  

 

 

ヤクザと刑事の骨太な落とし前

 

クライマックス。お互いがお互いのやり方で「落とし前」をつけるクライマックスは骨太で最高なんです。なんて言うんでしょう、ヤクザと刑事、お互いの意地とプライドを見せたという感じ。

 

ドンスはヤクザの掟(やられたらやり返す=殺す)で裁きたい。チョンは法律(逮捕して罪を償わせる=生かす)で裁きたい。

 

殺人鬼を生かすのか殺すのか。どう考えてもドンスとチョン、ヤクザと警察がそれぞれの面子を保ちつつ納得できる落とし所は無いはず。

 

無いはずなんだけど、あったんですよ、素晴らしい落とし所が、結末が。それもまったく無理のない結末。まぁ、ココでは書きませんけど、殺人鬼がムカつく奴だったので、個人的には清々しい結末だったとだけ書いておきます。

 

 

 

韓国映画の勢い

 

『悪人伝』という作品名のおかげで、微妙にB級感が漂ってますが、内容は抜群に面白いです。内容は特A級です。日本映画と韓国映画を比べるのはいかがなものかと思ってはいるものの、アカデミー賞を獲った『パラサイト  半地下の家族』しかり、本作『悪人伝』しかり、面白さは日本映画の先を行ってるような気がしました。

 

そして何より、本作はマ・ドンソクの圧倒的な存在感。これに尽きる。これほどまでに重厚感&重量感のある主演俳優はなかなかいないです。ホント稀有な存在だと思います。

 

日本で本作のリメイクをするとしたら、ヤクザの組長ドンスをやるのは、誰だろう。役所広司さん?佐藤浩市さん?う〜ん…カッコいいし、やれるだろうけど、(腕っ節の)強さが圧倒的に不足してる。本物感が無いですよね。日本にはいないよなぁ…主役を張れるようなパワーファイター系俳優が。(ちなみにチョン刑事を演じるのは武井壮さん一択で。ノイズになるほど似てた。)

 

韓国映画の勢いを感じる本作『悪人伝』。傑作です。僕は超オススメします!

 

おしまい。